泡沫の夢

□甘い匂いに包まれる
1ページ/1ページ




鼻腔をくすぐるふわりとした甘い香りに誘われて、衝動的に唇を奪う。姫は当然ながら驚いて固まり、真っ赤な顔をこちらに向けてくる。


「ア、アヴィ……?」
「あぁ…なんか甘い香りがしたから、つい……」
「ついって……、もしかしてこれかも」


そう言って姫が懐から取り出したのは、リップクリーム。蓋を開けて香ってきた匂いは、先程俺が感じたものと一緒だった。


「最近唇が乾燥気味だからコレ塗ってるの。甘い香りつきでお気に入りなんだよね」
「なるほどな、それでか……」
「この匂い、いやだった?」
「いや、ただ……」
「ただ?」


不安気に問いかける姫に、俺は再び唇を重ねる。今度は舌を捩じ込んでより深く姫と交じりあう。逃れようと反射的に身を引こうとする姫を両腕でしっかりと閉じ込め、逃げる舌を追いかけて絡めとる。ふわりと香る、あの甘い匂い。あぁ、やはり。


「いつもより、甘いな」
「ん……アヴィっ……」


息を乱し、潤んだ瞳で俺を見上げてくる。より一層強くなった甘い匂いに、俺は熱情を抑えられなくなり、衝動に突き動かされるままに、彼女を押し倒した。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ