ベーカーストリート

□第十話 エスケーイー家の犬【後編】
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ところで…私と玲奈さんは大場が東京へ行ったのかどうか遠回しに聞いてみると、彼女はずっと屋敷内にいたことを話した。


その夜、私はふとトイレに行こうとすると、大場が忍び足で廊下を歩いてるのが見えた。私はそっと尾行した。幸い気づかれることなく二階の部屋へと入った。そして、白川通りの矢場公園が見える窓枠に近づくと、何かを待っている。けど、公園先は何も起こらなかった。大場は懐中電灯を消した。私は慌てて部屋へ戻った。

翌朝玲奈さんと相談して大場の怪しげな行動を探る作戦を立てた。夜のうち、私たちのどちらかが起きて、大場を見張っているというものだ。けど一回目は失敗した。何にも怒らなかった。

次の日の夜、大場はまた例の部屋へ行き、懐中電灯を窓ガラスに近づけたとき、私たちはすかさず部屋の中へ入って行った。

玲奈「何してるの、美奈?」

大場「いえ、ただ夜景を見てただけで…」

そこで私が試しに懐中電灯を近づけると、矢場公園のポッと光るものが見えた。電灯を横に振ると公園の光も横に振った。何かの合図らしいが大場は教えようとしない。

大場「気のせいですよ。何かの間違いで」

玲奈「嘘つくな!!あの光は何だ?!ここで何やってたの?言いなさい!!ことによっては…」

鈴蘭「待ってください!!」

驚いて振り向くと、同じ召使の山内鈴蘭がいた。


鈴蘭「私の従妹が公園に隠れてるんです。見殺しに出来なくて…玲奈さんに隠れて食事を運ぼうと裏で合図してたんです。公園の明かりは食べ物を持っていく場所を教える目印だったんです。」

玲奈「そうだったの…で、その従妹ってのは?」

鈴蘭「脱獄した殺人未遂犯の木本花音です。」

指原「木本花音?!」

大場は同僚の鈴蘭のために口を割らなかったらしい。大場と鈴蘭が引き取った後、私と玲奈さんは真実を確かめるべく矢場公園へ向かった。
木本の明かりがかすかに見える。公園に近づいたときまたあの声が聞こえた。

ウォ〜ン

玲奈「さっしー先生、あれは犬の鳴き声ですね?」

指原「そうだね…今夜はもう帰る?」

玲奈「やっぱり私の家に伝わる伝説には真実味があるのかな?とにかく行こう!!」

と、公園の広場に入ったその時、前方に見えた木本の明かりが消えた。どうやら私たちの声が聞こえたのだろう…私たちは急いで屋敷へ帰って行った。とその時、私は交差点で、一人の背の高い人が私達をじっと睨んでいるのを見つけた。私たちが急いで帰ろうとするとその人はさっとどこかへ消えていった。結局、玲奈さんと私は木本を見逃すことにした。

それを大場に話すと、彼女は少しホッとしたような顔をしてこんなことを話した。

大場「亡くなった松井誠氏が屋敷の外で待っていたのは、『MT』という小説家に会う為なんです。あの朝、彼女からの手紙が来てたんですが…忘れてまして、数日前、主人の部屋を掃除してたら、ゴミ箱の中に例の手紙が入っていて読んでみると、夜の10時にそちらに伺います。読んだら捨てるようにと書かれていたのです。」

これは思わぬ手がかりとなった。それに、一人の小学生ほどの少年に食事を運ばせていることを教えてくれた。多分そいつが夕べ見かけたやつだと思う。そこで、玲奈さんを残しその怪しい人物のいる守網寺へ向かったが、途中で『松村香織』に出会った。彼女は強引に私を家へ連れて行った。

松村「実はな、私脱獄犯の木本花音の隠れ家を知ってるんだ。けど警察に教えてやんない!!」

指原「なんだそりゃ?」

松村「信用できない!!…脱獄犯は少年に食事を運ばせてるんだ。」

どうも勘違いしているようだ。私は口実を出て松村の屋敷を出た。そして、目的地の寺へ向かった。やっと到着したときは昼過ぎに出たので暗くなってきた。怪しい人も少年もいなかったが、近くの梵鐘を見つけたので試しに行ってみた。見てみると…人がいた形跡があった。寝袋に旅行ケース…。ここに住んでるのか?カップ麺や食べ終わった弁当の袋詰めがケースの中にあった。と、寝袋の下に一つの携帯があった。まずいと思いながら見てみると

『さっしーは松村香織の屋敷へ行った。』

というLINEメールがあった…私は監視されてるの?なんで?誰が?



ザッ…ザッ…誰か来た?!


??「何してんのさっしー?夕焼けが綺麗よ〜」

指原「まゆゆ?!」
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