中編

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誰だってそうだと思う
愛した人に愛されたい
相思相愛
って言葉を誰もが憧れるものだと


私もその内の1人


好き


彼が好き
大好き
だから彼にも私を好きになって欲しい
私を…愛して欲しい




「その前にはまず話しかけたら?」

『ぐっ、』

「乙女モードに入るのはいいけど、やることやって愛されなさい」

『うぅ…』




友人の一言によって現実に引き戻される
私__名字名前はただ今片想い中
話しかけたことすらない
同じクラスではあるけど、恐らく認識もされていないだろうってレベル




「つーか、あんな奴のどこが良いの?全くもって分からない」

『えぇ!?カッコいいじゃん』

「見た目はね」

『性格もカッコいいよ!』

「私スカしてる奴嫌いなの」




なんて友人は私の好きな人を否定する
スカしてなんかないもん!
カッコいいだけだもん!
とか反撃しても、はいはいの一言で片付けられる。
悔しい…




「で、協力するのはやぶさかじゃないけど結局名前が行動しなきゃいけないのよ?」

『わ、わかってるよ』

「本当にわかってる?」

『う、うん』

「じゃあ今から話しに行こっか」

『やめてええぇ!!』




私の腕を掴んで彼のもとへ連れて行こうとする友人
私は必死に抵抗する
だってほら!彼は今寝てるし、わざわざ起こすのは悪いでしょ?
いきなり喋りかけて何コイツとか変な目で見られたくないし、




『取り合えず止めて下さいお願いします。』

「全くもぉー、そんなんだから駄目なのよ」

『自分でもわかっています。不甲斐ないばかりで…』

「これじゃあ愛されたいなんて、夢のまた夢ね」

『そんなぁ〜』




自業自得でしょ。って苦笑いのご友人は、いつも私の為を思って言ってくれている。
私は良い友人を持ったとしみじみ思った






──…






「今日はどうする?」

『図書室で勉強でもしながら待ってる』

「了解。じゃあまた」




べ、別に1人で帰るのが寂しいとかじゃないもんね!
部活をしている友人を見送り図書室へまっしぐら


扉を開ければ、誰も居なかった




『(あれ、当番の人もいない)』




こんなこともあるんだなぁ
とか思いつつ、ここに来た時の定位置につく




『(越前くん、いないかなぁ)』




この位置からはテニスコートがよく見える
私の想い人はテニス部所属で
だから必然的に探しちゃうんだけど…




『(見当たらない)』




まだ来ていないのか
あるいは運悪く見えないとこにいるのか…
窓を凝視していた為、扉が開く音に反応が遅れてしまった。
見られてないことを願い、ソーッと誰が来たのか覗く
恐らく当番の人、もしくは先生だろうとは思うが…




『(嘘っ、越前くん!?)』




私の想い人が入って来た
通りでテニスコートにいないはずだ…と思ったが、なんでここに?という疑問もうまれた。




「なんだ、誰もいないじゃん」




これってチャンスなのかな?
2人っきりってやつだよね?
今こそ、今こそ私に話しかける勇気を!!




『ああぁあ、あのっ!』

「!?」

『えぇ、越前くんって、図書当番?』

「そうだけど…」




しまった!
いきなり出てきて名前呼ばれても私のこと知らなかったら変な人じゃん!!
ど、どうしよう、これ以上話すこともないし




「名字だけ?」

『え?あ、はい』

「じゃあさ、当番頼んでも良い?」

『へ?』

「俺、部活あるから」

『あ、うん。全然構わないよ!部活頑張ってね!!』

「ん」




そうして去って行く越前くんの背中をボッーと見つめ、しばらくしてハッとしたように私の顔は赤面し始める




『(越前くん、私のこと知っててくれてた)』




クラスメートなんだから当たり前と言えば当たり前なんだけど…越前くんだしなぁなんて


勇気を振り絞ったさっきの私を褒め称えたい
初めて越前くんと喋ることが出来たんだよ
これはもう報告するしかないよね?




『(あぁ、早く部活終わらないかな?)』




私はどうも単純なようです…






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