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□君へのきゃんどる
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知ってた。ううん、知ってたと思い込んでた。

僕は君が好きで、君も僕が好き。

そう思ってたけど…




【俺、彼女出来た…。】


これが現実。


好きな人からの目覚めのメールは最悪なものだった。


ていうか、どうしよう。これに僕はなんて返信すればいいんだろう…


『嫌だ!』…なんて、言えないし。

…そう思いながらも、僕の指は僕のキャラ通りの返信を送っていた。




【涼介の癖に僕より先に彼女作るとか、有り得ない!笑】


違う、違う、嘘だよ。涼介に彼女とか居ないよね…?


【うるせ、本当だっつーの!なんなら合わせてやってもいいけど?】



なんで…涼介、この前のアレは何だったの…?
_一昨日_


涼介「ちぃーねーんー!」


そう言いながら追い掛けてくるのは、顔中に落書きされてる、僕の大好きな人。



知念「ぷっ、涼介、そんな顔で来ないでよ…ははっ!」


腹筋が痛くなる程笑いながらも逃げ続ける僕。


理由は単純、僕が寝てる涼介の顔に落書きしたから。



涼介「はっ、お前が書いたんだろっ!」

そう言いながら顔を怒りに染める彼の顔は、やはり怖いというより“面白い”の方が合っていた。


知念「あはは、やめてよ、お腹いっ…!わっ、!」

後ろ見ながら走っていると、ついつい油断して転けてしまった。


知念「いったー…あ。」

そう言って上を見上げると、


涼介「捕まえた…!」

怒りながら、顔を持参のウエットティッシュで拭いてる涼介の姿。


知念「…ごめんね?」

床に這いつくばった状態だから、自然と上目遣いと涙目になりながら、申し訳なさそうに言うと(演技)、


涼介「…っ//別にこんなのどうでもいいけど……(チュッ)…これで許す。」




…え?今のどういうこと?

涼介の唇と僕の唇が…?

涼介の顔は赤い。それは怒りのせいかキスしたせいかは知らない。


でも、僕はキスをされたから、涼介より赤い。



涼介「……立てるか?追いかけ回してごめんな?」

そう言って差し出された手を握って、僕は起き上がった。


知念「ほ、本当だよ!もう、可愛い僕に傷ついちゃったらどうすんのさー!」

ぷんぷん!という効果音が付きそうな勢いで怒ったふりをするけど、本当は


今のどういうこと!?ま、まさか、涼介も僕が…え、え!?


涼介「ほら、これやるから機嫌直せって。」


ポケットから出てきて、僕の手に乗ったいちごきゃんでぃー。

僕はそれを受け取って仕舞った。


知念「仕方ないから許してあげる!てか、もう帰らないとじゃん。」


そう言ってスタスタと来た道を引き返す僕の手を涼介は握って、走り出した。


涼介「そうだな、ほら、行かないとな?」


ドキッ


知念(あー、僕って、幸せだなぁ。)



そう、これはほんの一昨日の事だったんだ。

どうして、なんであの時キスなんかしたの?

そう思ってたけど、時間が経てば冷静になってきた。


メールが送られてきた1時間後。


あの後水を飲んでボーッと考えていると、1つのことが頭に残った。


“涼介は、元々そんな気じゃ無かった。”


…うん、元々涼介って誰にでも優しかったりするし、それに何より変態だ。

だから、キスなんてなんてこと無かったんだ。


今までの、そう。僕がするぎゅーや頬へのちゅーと同じもの。



そう考えてると何故か頬が濡れていた。


嫌だよ、なんて幼稚な答えはもう無かった。



否、無かったじゃなくて、押し殺した。の方が合ってるのかも知れない。


でも、とりあえず、今は




知念「りょーすけ……おめで、とう…。」


ポツリと、そう呟くと同時に、頭にひとつの歌が流れた。


“幸せ願えるよう
僕ができることは

君と見た夢乗せる
星がこの手に落ちなくても

二度と逢えなくても
あの笑顔がずっとつづくため

君に向けた想いの灯を
願い込め消すこと”


涼介が書いた、あの曲。

_END_

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