彼らの昔話

□如月蓮音
1ページ/1ページ

俺には優しい母と強くて頼りがいのある父がいた。

俺の名前はお母さんとお父さんの名前から一文字ずつ取って名付けられたという。

平凡。でも、幸せで暖かな家庭だった。
けれどそれは突然壊れた。お父さんが病死した。
それからお母さんは女手一つで俺を育てるために血の出るような内職をして夜遅くまで働いた。
それが祟ったのか母は病気になり亡くなった。
10歳──俺は親戚に引き取られた。けれど、俺の顔を見た瞬間継母の顔が般若のように変わった

「あの女の息子だなんて…ああ、憎たらしい!!」

よく分からないがこの人は俺の母親を憎んでいる。
そして、その母親の顔に似た俺を憎んでいる。
何でも、美由紀さんは母との知り合いで父の事が好きだったが選ばれたのは母だった。それを逆恨みしていたというのだ。
馬鹿馬鹿しい話だと心の中で嘲った。
俺は母親譲りの顔を醜くして嫌われ者にするために顔に火傷のあとをつけられた。
泣き叫んだりすれば殴られるのは火を見るより明らかだった。
小学校・中学校は孤独で、友達などいなかった。
顔のことでからかわれたり陰口を言われたりした。
好きな人はいたがその人に不快な思いをさせたくなかった

だからこそ感情を押さえ込んだ。

俺に価値など無い。

悲しいくらいに無価値なんだ──

愛情なんてほんのわずかしか知らないんだ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ