長め
□Persona4Change
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さて、のんびりと一日目を過ごしていた悠だが、次の日には早速学校がある。
転校初日に遅れるわけにも行かないと思った悠はその夜、何時もより少し早めに就寝した。
(明日から大丈夫かな…)
自分がこれまでいた場所とは全く違う環境に戸惑い不安になるが、それを消そうと悠は無理矢理瞼を閉じて眠りについた。
ゆっくりと。
そう、ゆっくりと眠りについた。
だが。
気が付けばそこは霧の中だった。
「…え?」
ぼんやりと白く霞む、瞼を閉じた暗闇とは違う視界に悠ははっとするが、自分が寝たことを思うとここは夢だと区切りをつけた。
しかし、夢と済ますには余りにもリアルな感覚。肌にあたる霧は寒気をもたらし、風が吹けば霧が体を撫ぜる。
「ここは…稲羽?」
よくよく見てみれば街並みは今朝通ってきた道にそっくりだ。
ゆっくり周りを見渡せば、ふと霧の向こうに人影が見えた。
「…誰かいるのか?」
悠がそう呟くと、その人影の方から声が聞こえた。
「真実はいつも霧の中だ。人は自分に都合の良い物だけしか見ようとしない。真実を知りたければ捕まえてごらんよ。」
「っ?!」
その声を聞いた途端に、悠の意識は夢から急に目覚めた。ベッドサイドの目覚まし時計は午前1時を少し過ぎた頃合をさしている。
「…今の夢はなんだったんだ…??」
思い出そうとしたが、眠気に勝てなかった悠はそのまま再び眠りに落ちた。
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「はじめまして、鳴上 悠です。一年間よろしくお願いします。」
転校の度に口にしてきた言葉と共に悠はクラスメイトに向かって頭を下げる。
どうやらクラスは一学年に二つしかないようだ。
席につくと、隣に座っていた明るい茶髪の少年が声を掛けてきた。
「鳴上でいいよな?俺は花村 陽介!これからよろしくな!」
ニカッと笑って挨拶をしてきた少年、陽介は鳴上にも好意的に接してくれた。
(よかった、やっていけそうだ…)
陽介に色々と聞いていると、二人の女子生徒が訪ねてきた。
「鳴上君、はじめまして!私は里中 千枝!趣味はカンフーだよ、よろしく!」
「天城 雪子、です…よろしく…!」
元気いっぱいな緑ジャージの千枝と赤いニットが特徴的な雪子は陽介の友人らしく、鳴上と話そうと思っていたらしい。
「あ、そうだ!もう一人紹介するね!」
ふと、千枝が思い立ったように席を立った。
「ねぇ、こっちこっち!」
「何?僕は別にいいよ!」
「いいから!ね?」
ズイッと千枝が背中を押して突き出してきたのは一人の女子生徒。
短く切りそろえた前髪と所々でぴょこぴょこと跳ねる長い黒がかった茶髪が印象的な彼女は渋々と言った感じで自己紹介をした。
「…僕は足立透。これでいい?」
「あ、あぁ。」
「足立!もうちょい笑ったらどうだ?」
「…ハッ」
「今俺のこと鼻で笑った?!」
「笑えって言ったのはそっちだよ、ガッカリ王子君♪」
陽介を一通りからかって遊んだ女子生徒、透は席に戻って分厚い本を読み始めた。どうやら普段は大人しいらしい。
「まぁあんなんでも慣れれば毒舌MAXでからかってくるから心配すんなよ!」
「心配するところしかないぞそれ。」
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休み時間にちまちまと話していると、千枝と雪子が最近のことについていくつか話題を出した。
「そういえば最近、市議会議員秘書の生田目と不倫してクビになったアナウンサーがこの町に来ているらしいよー。びっくりだよねぇ。」
「アナウンサーが?」
「そ。都会じゃ大騒ぎみたいだよ。」
「そんな事が…」
「鳴上君は知らなかったの?」
「ココ最近は荷造りで忙しかったから…」
「なるほどなぁ。」
「あとはそうだな…最近だと…あ!マヨナカテレビ!」
「マヨナカテレビ??」
聞きなれないフレーズに首を傾げる。
「あのね、雨の日の真夜中の0時ぴったりに電源をつけていないテレビを見ると運命の人が映るっていう噂なの。」
「そんなものまであるのか…」
「試してみるといいかもね!」
チャイムが鳴ってその場はお開きになったが、悠はマヨナカテレビがなんだか面白そうだなんて考えていた。