夏の記憶
□#2
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〜アヤノ〜
(少しさかのぼります。)
私は今屋上へと続く階段を登っている
聞こえるのは私が階段を登る無機質な音だけ…
もう嫌なんだ…幸せが壊れちゃうなんて…
…それならいっそのこと……
…私は屋上の重い扉を押し開いた
風に私の髪とマフラーがながれた
『ダメだよっ』
え…?
頭の中に知らない誰かの声が響いた
『ダメだよっ君は死.んではいけない…』
また焦ったように訴えかけるまだ幼い声が響いた
でもっ…お父さんの計画を潰す方法は…
これしかないんだ…っ
私は屋上のフェンスをまたいだ…
茜色に染まった夕焼けが見える
その夕焼けは残酷なほどに美しくて
これがこの世界で見る最期の夕焼けだ…
そして…私の体はゆっくりと地面におちていく
あぁ…
これから私は死.ぬんだ…
視界がだんだん黒く染まってゆく…
瞼が重い……
霞んでいく視界の中最期に見たのは大きな黒い蛇が私のことを嘲笑っている姿と…
"私の方に手を伸ばす白いワンピースの少女だった…"
その少女が『だからダメだと言ったのに…』と
つぶやいたような気がした……。