Harly potter

□嫌まれるその時まで
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 スネイプの言われた通りに材料を入れては混ぜ煮込む作業を一時間は続けていただろう、依頼品ということもあり真剣に調合に取り組んでいたためか終始無言の作業だ。

しかしルナは楽しくて仕方がないようで夢中になっている、それはスネイプも同様。

魔法薬学は向き不向きがはっきり分かれるがルナはその前者だ、スネイプは長年教師をしていて愚か者は多々いたもののここまで優秀な生徒は初めてだった。
ましてや3年遅れているはずの転入生だ、魔法省のための薬を手伝わせている時点で度が越えている。

真実薬がもうしばらく煮込めば完成するところまで到達すれば、ふたりで調合すると普段よりどれだけ早いかを実感した。

「さて…蓋をしたところでお待たせしていた本題に入ろうかな。話とは一体なんだね?」

突拍子もなく突き付けられた質問、ルナは薬を作る楽しさに耽っていたためかそのことをすっかり忘れてしまっていた。
そのため心の準備なしではいきなり本題を口にすることなど不可能に近い。

「え!それは…また今度お時間がある時に…。」

「そんなに手間を取るような話題なのかな?」

散らかした材料や器具を杖で片付けながらスネイプにそう言われればルナは口ごもり、頭のなかではどう誤魔化すかの言い訳ばかりが廻っていた。

「…まだ悪夢を見るとか?」

「夢は問題ありません。昨夜なんてスネイプ先生が夢に出てきたんです。」

嬉しそうに話した後で激しく後悔する、こんなことを言ってしまったら気持ち悪いと気味悪がられるに違いない。

ルナは更に動揺し言い訳を必死に考えるが何も出てこない、その上スネイプは何も言わない。

ルナが混乱する頭を落ち着かせ顔を上げた時だ、遠くにいたはずのスネイプが鼻先が触れるほどの距離に迫ってきた。
その事実が頭で処理されるより先にスネイプの腕はルナの背中に回されきつく抱き締められる。

「っ…!?スネ…」

「君は、いつも誰かにそんなことを言っているのか。」

そんなこと、つまり思わせ振りな発言のことだろう。
ルナの体を覆うスネイプの体温は温かく、響く鼓動は早い、それらが直に伝われば伝わるほどルナは息をするのも苦しいくらいに体も心も強ばらせた。

ゆっくりとルナから離れるスネイプ。
しかし目に飛び込んできたのは火照った顔と潤んだ瞳で切なそうに見つめてくるルナの姿だった。

「…随分物欲しそうな顔をする。今我輩が君に接吻を落としてもなんら不思議ではない状況だということを分かっているのかな?」

ルナの白く筋の通った鼻先とスネイプの鼻先をすり合わせ、もう唇が触れてしまいそうな距離まで近づき見つめればそのままスネイプが顔を離してしまう。

「…今夜はもう帰るんだ。我輩が寮まで送ろう。」

スネイプが掛けていたローブを手に持ちそれを肩に羽織った時だ、ルナはもたれていた壁から離れると出来上がった真実薬をスプーンにすくい喉を鳴らして飲み込んだのだ。

「セイント!」

ルナの元へと駆け寄るスネイプ、吐き出させようと両頬を片手で掴み押してみるがルナは苦しそうな表情をするだけだ。
そしてゆっくりとした動作でスネイプの手を払うとルナは赤く染めた顔を近づけスネイプの唇に小鳥のようなキスを落とした。

重ねた唇を離せば、ふたりの時が止まったようにお互いの目を見つめ合う。
しばしの時が過ぎ、おもむろにスネイプから顔を寄せ口づけを求めればルナはおずおずとキスを落とし軽い接吻を続けた。

「せんせっ…」

ルナが興奮で息を荒げながらスネイプを呼べば、スネイプは雄の色気を含んだ物言わぬ視線を送り続ける。

「…先生と一緒にいる時間が幸せで、でも先生は先生だから私が好意を持っても邪魔なのは分かってるのに、それでも特別で…大好きで。」

ベリタセラムの飲み過ぎが原因なのか、言いたかったこと言わなくてはならなかったことが次から次へとわき出てくるのを止められない。
コントロールを失った口から出る言葉は告白と呼ぶにはあまりにも粗末だ、しかしスネイプの胸に刺さるには充分すぎる。

「…お前といる時間は、我輩にとって耐えがたいものだ。この我輩が心乱され抑制、理性の抑えがきかなくなる。こんなにも…人が愛しいと思う。この歳にもなって嘆かわしいことだと、自分を呪う日々だったが…。」

すぐ後ろにある机にルナを追いやり体を押し付ければ自然と机に身を預ける形になる。
スネイプは押し倒したルナに覆い被さると嘗め回すようにその整った顔を見つめた。

「…愛していると…誓える。」

スネイプは重そうな口を開きお互いの額と額を擦り寄せる。

ねっとりとした視線を絡め合えば再びキスをし、鼻や頬、唇の横を這うように口づけを落とした。

「先生…。」

「この先、ふたりの時は名前で呼びたまえ。」

「セブルス…?」

「そうだ…。」

甘い空気、むせ返るような薬品の匂いの中、ルナは目の前にいるスネイプの香りをいっぱいに吸い込み幸福感に酔いしれる。

結ばれた喜び、愛しくて堪らない切なさに目を潤ませスネイプを見れば、涙の溜まった目にもキスを落とされ薄い微笑みが向けられた。

(いつか我輩にも、ベリタセラムを飲まなくてはいけない時が来るだろう。この腕に刻まれた闇の証をルナに見せるとき、離れていく君を追ってしまわぬようにしなくてはならないな…)

スネイプはルナを抱き締める腕に罪悪を感じたが、この幸せを亡くしてしまうその時まで愛し続けようと誓ったのだ。
紋章で痛む腕を握り締めながら。
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