Harly potter
□嫌まれるその時まで
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夕食の時間、いつもと同じように寮ごとの長机に座り豪勢な夕飯に舌鼓を打っている時だ。
ふくろう便が飛び回る時間も重なり空から郵便物が落ちてくる、ロンの元にも新聞が届いたようで骨付き肉を食べながらガサガサと広げていた。
しかしいつもと異なることが起こる、これには生徒のみならず教師も目をはった。
ルナのフクロウからスネイプに手紙が届いたのだ。
その手紙が宙からひらひらと舞いスネイプのテーブルに落下すれば一瞬静まり返る広間、スネイプが居心地悪そうに皆を睨み付ければまた騒がしくなるがまだチラチラと視線が刺さる。
「おいおい、スネイプにラブレターかよ。」
ロンが茶化せばルナは恥ずかしそうに首を振った。
「違うの、今日空いている時間があるか聞いたんだけどこんなに目立つと思わなかった…。」
申し訳なさそうにスネイプを見つめればその人と絡む視線、スネイプは少し不服そうな顔をしているが何も言わずルナの手紙を開いた。
ルナはそれを確認すると夕食の後のスネイプを掴まえて答えを聞き出そう。とイチゴのパイをかじりながら考える。
後ろでフレッドとジョージが五月蝿いくらいに、スネイプに手込めにされる等喚いているがルナには気にならなかった。
「先生!」
夕食を終え、寮に帰っていく生徒達の間を縫いスネイプを探せば列から外れた廊下にいる真っ黒い姿。
ルナは咄嗟に名前を呼べばその呼び掛けにおもむろに振り返るスネイプ。
「…あの手紙の返事を聞きに来たのかな?」
小首を傾げてそう問いかけられればルナは首を縦に振った。
「生憎、これから頼まれている薬の調合があるのだ。夜までかかるだろう。」
その言葉にルナは内心落胆した、しかしそれを悟られるわけにはいかない。
「あ…じゃあ別の日で…」
「君が嫌じゃなければ、調合を手伝うかね?」
願ってもいないお誘いだ、ルナはスネイプに薬の調合を教わることは多々あるがその手伝いを頼まれたことはなかった。
初めて認められたようで素直に嬉しい、ルナは想いを伝えることなど忘れ目を輝かせた。
「いいんですか…!?」
「…構わん、失敗は許さんからな。」
来い。と続けると自室に向かうスネイプ、ルナは嬉しそうにその後を追った。
「どんな薬を作るんですか?」
「真実薬、ベリタセラムだ。もう勉強済みかな?」
本来なら6年生で初めて耳にするようなレベルの高い薬だ、ましてや生徒がおいそれと手を出すような薬物ではないため知らなくても当然。
しかし勉強家すぎる程のルナのことだ、ルナに限っては知っていても不思議ではない。
「はい…でも私なんかが調合に関わってもいいのでしょうか。」
「あまり高度な技術を要するものは頼まない、魔法省からの依頼だからな。」
ルナはそれを聞かされ怖じ気づいたような表情を浮かべる。
それに対してスネイプが鼻から息を吐くような笑いをこぼすとたどり着いた自室のドアに手をかけた。
何度来たか分からない部屋に入ればルナの好きな匂いが鼻をかすめる。
スネイプの香り、しかし今日は薬草の匂いがきつい気がし、部屋の奥を見れば煙をあげている鍋が目にはいった。
「だからいつもと違うんだ…」
ルナがぽそりと呟けばそれを聞いていたスネイプがローブを脱ぎながら怪訝な顔をする。
「何が違うのかね。」
「先生の部屋の匂いがいつもと違うんです、薬作ってるから…」
「…我輩の匂いだと?」
「薬草とアルコールと先生の匂い…いい匂いです。」
ルナがふわりと微笑みを見せるとスネイプは調合の準備をしていた手を固めてしまう。
どうしてこうも揺さぶられてしまうのか、スネイプは薬の調合にルナを誘ったことを少し後悔した。
「…真実薬は途中まで出来ている、あとは仕上げの作業だが長くなるだろうな。」
鍋の側に立ち煮込んでいた火を弱めると干からびた何かを放り込みながらそんなことを言う。
ルナは爛々とした赤い目を大きく開くと同じく鍋の側に立った。