Harly potter
□確信
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スネイプと新再生薬を作ってしばらく経ち、休暇を挟んだこともありすっかり翼の治ったルナは久々の寮でのおしゃべりに花を咲かせていた。
「ねぇ、ルナって好きな人とかいるの?」
ロンの妹であるジニーがそんなことを訊ねればルナは笑顔で首を振る。
「まだみんなと喋れてないし、分からないなぁ。」
その一言にその場にいた女子は胸を撫で下ろした。
そんな様子に気づいたルナがどうしたのかと聞けば、言い辛そうにハーマイオニーが口を開く。
「スネイプとあなたが恋仲にあるって噂が立ってるのよ。」
ルナは驚き目を見開いた。ショックを受けたように首を横に小刻みに振る。
「なにそれ…ひどいわ。」
「スリザリンの女子が言っていたのよ。スネイプの部屋に出入りしてるとか、休暇中密会してただとか…。」
ハーマイオニーが言うにはどうやらあることないこと振りまかれているよう、実はスネイプはスリザリン寮生の女子から人気がありそれを妬んでの嫌がらせだった。
「スネイプ先生は良い先生だけど私が慕っているだけだよ。スネイプ先生に迷惑かかったら、嫌だな…。」
そんな落ち込むルナの肩をチョウが擦りながら、嫌なことされたら言ってね。と励ます。
明日は丁度スネイプの授業が最初にあり、スリザリンも一緒に受ける。ルナは一抹の不安を胸に明日に備え寝ることにした。
次の日、ハーマイオニー達が心配した通り魔法薬学の教室では、スリザリンの女子生徒達がヒソヒソとルナの噂をしていた。
中には聞こえるように言っている者もおり、ふしだら女とか悪口を捲し立てている。
「僕段々腹立ってきたぞ…。」
ロンがスリザリンを睨み付けながらワナワナと肩を震わせばルナは苦笑いを浮かべそれをなだめた。
「その内落ち着くから、平気だよ。」
言われていることに対しては特に気にしていないルナだが、唯一スネイプの耳に届くことだけは避けたい。
もしこの話がスネイプに届くものなら迷惑を掛けることは間違いないし、何より今の心地よい関係を崩したくなかった。
そう思っていた矢先、噂の人物のもう一人がやって来て教壇に立つ。
「本日は試験を行う。課題は混乱薬だ、失敗した者には点を与えないので心して作るように。」
その一言で皆薬を調合する準備に取りかかった。
ハーマイオニーは自信満々といった様子で小鍋等の準備を始め、ルナも予習はバッチリしてきた。
用意されていた材料を並べいよいよ始まるテスト、ネビルは既に鍋を爆発させたようで0点は確実だ。
前にいるハリーもロンも苦戦している、ルナは深呼吸をすると昨日頭に叩き込んだ教科書通りに材料を鍋へと入れていく。
テストが始まってしばらく経ち、後はグツグツ煮込み煙が出るのを待つだけだ。
見たところ濃度も問題なし、ルナは一息つこうと張りつめていた姿勢を楽にした。
そして鍋から視線を横に外せば目に入るスネイプの姿、生徒の間を縫うように見回りをしておりバチリと目が合う。
あんなことを聞かされた後だ、ルナは妙に意識してしまいわざとらしい程に視線を慌てて外してしまった。
その様子を見ていたのだろう。スリザリンの女子生徒が一人近づいて来たと思ったら転ぶふりをして、いよいよ完成するところだったルナの混乱薬をひっくり返したのだ。
「ごめんなさい!まちがっちゃった!」
そう謝った後に満面の笑みを浮かべる。
スリザリンの席からは女子がクスクスと嬉しそうに笑う声が聞こえた。
これにはもう許せないといったようにハーマイオニーが席から立ち上がると嘘よ!と叫ぶ。
「あなた達!いい加減にしなさい!気にくわないことがあったら直接一人で話し合いに来なさいよ!」
「煩いぞグレンジャー、テスト中だ。グリフィンドール5点減点。」
この割って入ったスネイプの台詞にグリフィンドール生は驚愕した。
ハーマイオニーも怒りを越して呆れているようで口をパクパクと動かしている。
スネイプはそんなハーマイオニーの様子を尻目に、スリザリンの転んだ生徒を一瞥すると口を開く。
「薬は被っていないようだなミスヘムロック、席に戻れ。」
ヘムロックと呼ばれた生徒はニコニコしながら仲間の元へと戻り、その机からは煙が上がる。皮肉なことにヘムロックの混乱薬は成功したようだ。
ルナはというと落ちて転がっている鍋を机に戻し、溢れた混乱薬を杖のひと振りで片付けている。
しかしさすがに落ち込んでいるようでその表情は暗く俯いていた。
スネイプは試験の終わりを告げ生徒達の調合した混乱薬を回収し、机を元の状態にすると全員をルナの机に集めた。
「ミスセイント、皆への模範解答として混乱薬を作るがいい。」
スネイプの発言にざわつく教室内、一番驚いているのはスリザリンだ。
ヘムロックやそれを取り囲む生徒達は皆顔を見合せスネイプに訴えの目を向けている。
ルナは喜ぶグリフィンドールの仲間達に背中を押され、前に出るとスネイプの顔を見る。
スネイプは無表情のまま顎で机の上のまっさらな鍋を指すと、ルナに薬を作るよう促した。
そんなスネイプに消えていた笑顔を向けすぐに調合に取りかかる、周りで人が見ていること等忘れ夢中になっていると授業終わりの鐘が鳴り、同時に鍋から煙が立ち上った。
「…授業はここまで、0点を取った腑抜けは鍋洗いとしてここに残れ。」
そう一言だけ残すと背中を見せたスネイプ。
無論、ルナは満点のようだ。
グリフィンドールからは歓声と拍手が上がり、すっきりした顔のハーマイオニーに抱き締められた。
ルナはハーマイオニーに抱き締められながらも真顔でヘムロックを見つめ、悔しそうな顔で走り去る彼女を見送る。
「いい気味だわ。」
「スネイプ先生にお礼を言わなきゃ。」
ハーマイオニーの手を離れると、鍋洗いをしているネビルの横を通りスネイプの部屋へと急いだ。