Harly potter
□苦薬
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コトコトと小鍋で薬を作ること数十分、強力な再生薬を作ることに成功したスネイプはさっさとこれをルナに渡してしまおうと自室を後にしグリフィンドールの寮を訪ねる。
しかし、そこにルナはいなかった、ホグズミードにも行っていないと聞けば手を煩わせると苛々した。
まったくどこに行ったのだとしばらく闇雲に校内を歩けば、通った壁が盛り上がり扉が出現する。
必要の部屋。スネイプは望み薄だがそのドアノブに手をかけた。
物で溢れかえり天高くまでそびえているようなこの必要の部屋。
その中で、キィキィと小さくもけたたましい鳴き声がしきりに聞こえてくる。
その声のする方向にスネイプはローブを手に持ち進んだ、すると目に飛び込んできたのは多くの宙に浮くピクシーと戯れているルナだった。
スネイプは目を奪われ、その青々とした怪物に囲まれるルナをただただ見つめ、ふわりと浮かべる微笑みに見とれる。
なんとも美しいその光景は、きっとそれが悪の帝王だろうと足を止めるだろう。
攻撃的なピクシーも完全に心を許しているようで嬉しそうにルナの広がる翼に寄りかかったりしていた。
「スネイプ先生…?」
ルナがスネイプの存在に気づき座っていた腰を上げれば、じゃれていたピクシーは一目散に逃げていきその内の一匹はスネイプに向かって飛んで行く。
しかし、スネイプが杖を一振りすればピクシーは固まって動かなくなってしまった。
「…こんなところで何をしている。」
「探検してたらいきなりこの部屋が現れたんです。入ってはいけない部屋でしたか?」
申し訳なさそうに長い睫毛を伏せるとスネイプは小さくいや。とだけ言うと懐からまだ温かい小瓶に入った再生薬を取り出した。
「これをマダムポンフリーから渡せと頼まれた。再生薬だ、飲み干すように。」
「…スネイプ先生が作ってくださったんですか?」
スネイプはその問いに無言で瓶を渡す。
普段なら早々に立ち去るところだが、どういうわけか足を動かそうという気が起こらず随分と下の目線にいるルナを見つめた。
しかしその視線は決して甘いものではなく見た目には冷ややかに感じるもの。
ルナはその目付きに促されるように薬瓶を唇につけ飲み干した。
「ぅ"…」
小さく呻き声を発し、なんだこの不味いものはと言わんばかりの目線をスネイプに送れば、意地悪そうに口角を吊り上げ喉をクックッと鳴らす。
「良薬は口に苦しという言葉をご存知ないかな?」
「っそれにしても…ひどい味ですね。」
何回か咳き込むようにむせれば文句を言うなとスネイプがまた元の無表情に戻った。
「すぐに効いてくるだろう。君もこんな場所をほっつき歩いていないで休んでいたらどうかね?」
嫌みをたっぷり込めて言ったもののルナにとっては心配してくれているように聞こえるそれ。
やはり噂に聞くほど悪い先生ではないし自分のために薬を作って届けてくれた。慕うには十分過ぎるほどの理由だ。
「先生ありがとうございます。私今なら飛べる気がします。」
幼く笑ってみせるルナにスネイプは目を細め鼻を鳴らした。
「それは結構。」