Harly potter

□闇
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 足下に倒れている母、その目は開いたまま動くことはなく眼下には涙が流れている。

母にすがり付き泣きわめけども抱き締められることはなく目の前に立っているのは父、笑顔の父。











「ルナ!」

ハッと目を覚まし体を起こせばハーマイオニーがルナのベッドを心配そうに覗きこんでいる。

「うなされていたわよ?大丈夫…?」

「うん、ありがとう。」

ルナは小さくお礼を言うと目から流れる涙を指で拭った。

最近ひどく悪夢にうなされている、しかもその悪夢は過去の思い出したくもない出来事だ。

「おかあさんが死んじゃう夢を見るの。ここのところずっと…」

「…お茶を淹れるわ。」

ハーマイオニーは苦しそうなルナの顔を見ているのが辛くなり席を立つと、寮の食器がある場所へと消えていった。

「おかあさん…」

一言静かに呟くと幾度となく溢れる涙、精神的に不安定なのだろう。ルナは明日スネイプを訪ね精神安定薬の作り方を教えてもらうことにした。















「私は汚れた醜い人間です。」

悪夢のことをスネイプに相談に来ているルナがいきなりそんな台詞を吐けば、スネイプは怪訝な表情を浮かべ、ルナのために広げていた魔法薬学の書物を閉じる。

「いきなり何を言い出すのだ。」

「…先生は人を殺したことがありますか?」

ルナの口から聞き捨てならない言葉が出る。
スネイプは眉間の皺を寄せ驚いた顔をしたまま何も言わない。

ルナはそのスネイプの表情を見ると瞳に暗い影を落とし、おもむろに口を開いた。

「私は、父を殺しました。」

沈黙が流れる。決して心地よいわけではない耳障りな沈黙だ。

それを最初に破ったのはスネイプが椅子を引く音、ルナと向き合って座るために持ってきたようでそのまま腰を下ろしスネイプはルナを見つめた。

続けなさい。と言っているように、







4年前の出来事だった。

ルナが9歳になる頃、悪魔族の中で紛争が起きたのだ。

その紛争とは悪魔族がヴォルデモートの傘下になるか、そうでなければ殺されるかと攻められたことが始まりで、悪魔族のほとんどがそれに反抗し死喰い人に殺されていった。

しかし何人も仲間が倒れていく姿を見てヴォルデモートに降伏してしまう者もおり、血で血を洗うような戦いが来る日も来る日も続く。

そんな中、悪魔族のリーダー格であったルナの父、ライタスは生き残っている悪魔族を率いてヴォルデモートに全面戦争を仕掛けた。

ルナとその母フランは家に残され身を隠す。
幼いルナを胸に抱き夫の無事を祈る母は震えており、その鼓動は家の外で響いている激しい闘争の音よりも大きかった。





フランの胸の中でどれほどの時間を過ごしただろう。
気づけば先ほどまでの喧騒は届いてこない、母の顔を見れば今にも泣きそうな顔で顔色は蒼白だ。

フランは、ルナにここにいるよう伝えると杖を手に持ち家を飛び出した。

ルナは家の中にいるよう言われたが堪らずその後を追い、外の草むらへと身を隠す。

草むらの中で目に飛び込んできた光景は、父がヴォルデモートの前に阻み母はその後ろで杖を構えている様子だった。

地面には悪魔族の仲間達が転がり、辺りにはおびただしい量の血が流れていたが父は無事だ。

「あなた二人で力を合わせればきっと勝てるわ、このくそったれを殺してやるのよ!」

激しい剣幕でフランがそう叫ぶとヴォルデモートに向けられた杖、ヴォルデモートは不適な笑みを浮かべクックッと喉を鳴らしている。

「止めなさいフラン。よく聞くんだ、我々は死喰い人になる。」

ライタスの口から放たれた言葉、フランは何を言っているか分からないといった表情を浮かべライタスを見つめた。

「我が君、妻の愚行をどうかお許し下さい。必ず言って効かせますので…」

ヴォルデモートの足下に方膝をついて跪くライタス。

フランは絶望的な表情で肩をワナワナと震わせ涙を流した。

「あなたが…この戦いを持ち掛けたのは、この男の為だったのね?みんなを、騙したのね…?」

ライタスは死喰い人に悪魔族を売ったスパイだった。その事実を唐突に突き付けられたフランは、怒りと悲しみで我を忘れ手に持っている杖を振り上げる。

「アバダケダブラ!」

ライタスに向かって唱えられた呪文、しかし、とっさにライタスも手に持つ杖を振ると真っ赤な光を放ちフランの攻撃を反らす。

フランの手から杖が吹き飛んだ瞬間だ、

「アバダケダブラ」

目にも止まらぬスピードで杖の先から飛び出た光がフランに当たり、ルナがいる草むらまで吹き飛ばされる。

目の前に転がる母、その真っ赤な瞳は動かずに眼下には涙が溜まっていた。

「…お母さん?」

ルナの呼び掛けに返事はない、代わりにヴォルデモートの高笑いが耳に響いてくる。

ヴォルデモートはそのまま空に死喰い人のシンボルである骸骨と蛇を浮かべると消えてしまった。

ルナは草むらから飛び出し泣きわめきながら母にすがりつくがいつもの温もりはなく、抱き締められる感触もない。

母の名前を呼んで何度目だろう、頭上に影が落ち見上げれば母を殺した父が笑いながらルナを見下ろしていた。

「おいでルナ、大丈夫だ。」

抱き締めようと腕を伸ばされがルナはそれを掴むようなことはしない。

「…なんで、お母さんを殺したの…?」

「仕方がなかった。今はまだ父さんのことが憎いかもしれないがいつかルナにも分かる。ほら、おいで。」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃのルナを抱き締め頭を撫でれば、ルナは足下にある母の杖を手に取った。

「そうだ、それを使ってヴォルデモート卿に使えるんだよ。お母さんも、それを望んでる。」

お母さんもそれを望んでる。耳に入ってきた台詞にルナの中でなにかが音を立てて崩れた。

まばたきもせずに父を見つめれば笑顔を浮かべ手を差し出してくる。

ルナもそっと手を差し出すとそれを構えたまま、もう片方に握られた杖を振り聞いたばかりの呪文を唱えた。

「アバダケダブラ」
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