Harly potter
□魔法薬学
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長机に不思議な薬の匂いが充満した教室、いよいよロンから聞かされていた「育ちすぎたコウモリ」のような男の授業が始まる。
ルナはまだ来ない教師を待つ間ソワソワしてしまい、無意識に背中の羽が揺れた。
「君の羽って意外とコンパクトなんだね。」
横でやんわりと揺れる黒翼を見ていたハリーが口を開く。
「広げればもっと大きいんだよ。邪魔になっちゃうから広げないけど。」
ローブから出ている畳まれた翼をほんの少しだけ広げて見せれば、乾いた音を立てて艶やかな羽が床に落ちた。
「いっ…」
「どうしたの?」
ルナが顔を歪ませるとハーマイオニーが心配そうに眉を下げる。
昨夜シリウスブラックが学校内に侵入したため、床での雑魚寝を強いられたこともありルナは羽を痛めてしまっていた。
「寝違えちゃたみたい。」
「そう…昨日は勉強せずに寝ていたからゆっくり休めたと思ったけど。」
ルナは女子寮で夜中毎日勉強をしている。
皆と3年間遅れているからと寝ない日もあったことをハーマイオニーは知っていたため余計ルナの背中の痛みが心配だった。
ハーマイオニーがルナの翼をさすろうと手を伸ばした時だ、後ろのカーテンから前のカーテンへと順々にいきなり閉まっていき、真ん中の通路に全身真っ黒な男がツカツカと歩いてくる。
この男が魔法薬学教師、セブルス・スネイプだ。
「教科書394ページを開け。」
重たそうな口を開くと、低く、暗い甘さがねっとりと絡み付くような声で指示を出す。
ノロノロとページをめくるロンにスネイプがしびれを切らし、杖を振って394ページまで教科書をめくれば狼人間の文字。
ハーマイオニーがまだ習うべき範囲ではないと反発すればスネイプは黙れと冷たく言い放った。
「狼人間…」
ぽそりと呟いたルナの言葉にスネイプが目線をハーマイオニーからルナに移し、なめ回すようにその背負われた羽を見る。
「知り合いでもいるのかなミスセイント。」
種族柄、人間ではない者とも交友を持つ悪魔族だが今の言葉は嫌みだ。
ハーマイオニーはキッとスネイプを睨み付けるとまたも発言をしようと口を開いたが、それはルナによって遮られた。
「いいえ、残念ながら狼人間の知り合いはいません。普段は人間の姿だから区別がつかないし覚醒状態は危険ですから…。」
赤い瞳を揺るがすことなくスネイプを見つめれば、その無表情な顔にもうっすらと驚きの色が見られた。
まずスネイプの嫌みに物怖じせず発言したことと、その知識だ。
まだ習うべき範囲ではない。というハーマイオニーの発言は事実、それをさらりと言ってのけたその知能にスネイプの顔も曇った。
「…では、人狼と真の狼とをどうやって見分けるか?判る者はいるか?」
そしてこの質問の後にハーマイオニーがそれについて適切な発言をして、でしゃばらなくては気がすまないのかとスネイプから叱咤が飛ぶとグリフィンドールから5点減点されたのだ。
授業の後のグリフィンドール生の空気は最悪で、皆スネイプの暴挙に憤怒していた。
落ち込みの顔を見せるハーマイオニーにロンは鼻息を荒くしながら君のせいじゃないよと慰める。
「ほらな、最悪な奴だろ?あのスネイプめ!いつもいつも僕達に目をつけて!」
ルナもカンカンなロンの問いかけに僅かに首を縦に振った。
「あ…教科書忘れてきちゃった。」
そのルナの一言に三人は絶望の表情を浮かべ、またあの教室に行くことでルナが愚弄されグリフィンドールから減点されるのだと想像する。
「…一緒に行こうか?」
「いいの。平気だから先に行ってて。」
ハリーが哀れそうな顔で同行を持ちかけるがルナは笑顔でそれを断り、パタパタと急ぎ足で消えていった。