短所は長所に変えて
□プロローグ》
1ページ/3ページ
ープロローグー
「親父に俺の気持ちの何が分かるってんだよ!?」
「ヒト、待ちなさい!」
家の中で尻尾に炎を纏わせている2匹は、親子喧嘩をしていた。
怒鳴るように、父、リザードンを攻めた子は、ヒトカゲのヒト、深刻な悩みを持っていて家のドアを怒りでぶち当てるように押して出て行ってしまった。
「はぁ……、」
リザードンは、あの子の悩みに何時も頭を抱えていた。
☆★☆
「……、」
一方、大分家から離れた距離にいるヒトカゲのヒトは、悩みと怒りに頭は混乱され俯いていた。
地は砂利だらけの山中、森もポケモンもほとんどいない地を黙って歩き、父への信じられない言葉が頭の中で思い浮かべていた。
『ヒト……、お前もそろそろ良い年になり俺の言葉が理解できる程になった』
『何……?お父さん?』
2匹は机を間にして椅子に座り、父親は真剣な顔、眼差しでヒトを見つめ、ヒトは不思議そうにリザードンを見つめた。
『お前の尻尾と俺の尻尾に……いや、リザードン族にもとても苦しい現実で関わりのあることを話さなくてはならない』
『……?』
リザードンは目をつむりながら、ヒトに更に話しかけた。
『俺たち一族の尻尾の火には、重大な役割が果たされているんだ、……それは俺たちの命を繋ぐためにエネルギーを作っているんだ』
『……!?』
ヒトは、初めてそれを聞き驚き尻尾の火の役割はとても大切な事なんだと気付いた。
しかしそれが、満更良い事ではなく、話の本題ではなかった。
更に、リザードンは口を開きヒトに言った。
『この火は、言い換えれば俺たちの魂であり、なくてはならない存在……
だが、この火が消してしまうと俺たちは、エネルギーを貰えず生きることが出来なくなってしまうんだ……』
『…………えっ、』
『つまり……死ぬんだ』
……死ぬ、その言葉に、その真実を知ってから僕は何もかにも恐怖を抱いてしまい、4.5年経ってこの苦しみに悩まされ続け、遂には父親に反抗期≠ニいうものをしてしまった……。
尻尾の火は極めて小さい、火は水に弱いから水タイプのポケモンと戦って尻尾にかかれば鎮火……そして、死。
それ以上に、今雷がゴロゴロとなっている雲から大雨さえ降れば、死。
気を一瞬でも許してしまえば大風に煽られ尻尾の火は奪われて死んでしまう。
それを分かっていながらも、頭に血が上り、我を忘れて此処まで来てしまった。
「……どうしよう」
そう頭の中でいろいろと抱え、ヒトは結局足を逆に戻らず前を進んだ……。
☆★☆
ずいぶんと歩くと地はだんだんと草々が生えていき、山中を抜け出した先には小さな村があった。
「村だ……!」
距離200mで気づき、ヒトは頭を上げると一安心したような顔をした。
……ぽつん
「……!やばい、雨だ!」
だが突然、ヒトの頭に一粒の雨が落ちてきた。それに気づくと冷や汗をかかせ、大雨になる前に急いで走り向かった。
「はぁ、はぁ、急がないと!」
距離はあと150m、秒速2mの速さで向かうが雨は一粒三粒と増えていく、絶望さが増えていく中でヒトの頭は死のイメージをしていく。
「僕……死ぬの、かな?」
後150mで75秒速のところ、雨は確実に形になっていき尻尾の火にも何粒も当たっていく……このまま全体的に尻尾を濡らしてしまえば燃える位置は着実に縮め、そして死を近づける。
「……僕死ぬんだ」
目に涙を浮かびあげ、走っていた足は諦めをかけ、絶望、短い走馬灯のように頭が浮かび上がりもうダメなんだ……と思った。
「あっ!ヒト君!?
こんなとこで何してるの!?」
するとヒトの横に声が聞こえた。
「……たっ、ツタ?」
声のした方向を向くヒトは、ツタという名のツタージャだった。
涙で見えない緑の物体はヒトに近づき、降り注いでいた雨が途中でかからなくなり、ふと真上を気づくと、大きな葉っぱのした傘がさしていた。
「ヒト君危ないよ!?
このまま、濡れてたら死んでたんだよ!?
何ぼーっとしてるの!」
とツタージャのツタは、ヒト君を酷く怒った。
「たっ、ツタちゃん……
ツタちゃぁーん!」
「え?ちょっ!?ヒト君///?」
死の絶望の中で救われたヒトは、ツタの胸に抱きつき、人生で初めてなくらいの大涙で声をあげた。
「ちょっ!?
い、いきなり女の子に抱きつくって変態行為よ///!?」
「うわぁーん、ありがとぉー!
死ぬところだったよー!」
「ちょっと私の話を……、」
ヒトは無我夢中で泣き叫び、ツタは抱きつかれながらも怒っていた顔は、徐々に優しさを戻しヒトの頭を優しく撫でてやったのだった……。