自分探し

□私は誰?
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波の音が聞こえる…
少女はそっと眼をあけた
低い天井がみえる
瞳だけをゆっくりと動かす
彼女の横たわるベッドの左側には扉があり
その横には大きな本棚があった
少し首を動かして右側をみると
大きな窓があり
そこからはやわらかな光がさしこんでいる
まだ寝ぼけているのだろうか
少し浮遊感のような
部屋全体がゆれているような感じがする
ここはいったいどこなんだろうか

しかし彼女にはもうひとつ大きな疑問があった

わたしはだれ?

慌てたりしないのは元々の性格なのか
ただ単純に自分が誰かわからないということを
まるで昨日の夕飯が思い出せない程度のことに思えていた

少しぼーっとしていると
扉の外から鼻歌がきこえた
すると扉が開き
部屋に入ってきたのは
ツナギをきたシロクマだった
シロクマ…?
シロクマは彼女をみると驚いた顔をした後
「あっ!眼が覚めてる!
今キャプテンをよんでくるね!!」

と部屋をでていってしまった

シロクマがしゃべってる…

まだ夢の中にいるのかと彼女は上体を起こし頭をふった

「目が覚めたばかりだ
あまり頭を動かすな」

いつのまには部屋には
目の下にクマをたくわえた
かなり人相の悪い男がいた
その顔ににつかわずもふもふの帽子をかぶって…

「お前にはいろいろと聞きたいことがある」
ゆっくりとベッドのそばに近づきながら男はいった

男は警戒の色をみせていた

しかし彼女はこう答えるしかなかった
「わたしはだれですか」

その時男はピクッと眉を動かした
「記憶がないのか?」

「はい
わたしがだれなのか
ここがどこなのか
そして
あなたがだれなのかも
何も覚えてないんです 」

「残念だがおれたちも
お前が誰なのかはわからない
ただ…」
男はニヤリとしながら続けた

「お前がとんでもない
“バケモノ”
だってこと以外な」

バ ケ モ ノ

その言葉を聞いた瞬間
彼女に頭痛が走る
彼女は頭を抑える
何かを感じるが思い出したくない
息が荒くなる
わたしは バケモノ?

「おい!!」

強く肩を揺すられる
意識がゆっくりともどってくる

「大丈夫か?」

まだ警戒はしているが
先ほどよりも表情をやわらげ
心配気に彼女をみつめた

「悪いな
配慮がたりなかった
目覚めたばかりだ
少し休め」
男は持っていた肩をぐっと押し
彼女はその力に抵抗することなく
ポフッとベッドに横たわる
「すみません
ありがとうございます」

男は扉の方に歩いていきながら
「だが詳しい話は後でする」
と扉を開けようとした
「待ってください!」
彼女の声に振り返る
「せめてお名前だけでも教えてください」
男はニヤリと
「トラファルガー・ロー」
とだけ答え部屋をでた

「ローさん…」
つぶやきながら目をとじる
疲れが押し寄せる
その波にのまれながら深い眠りについた


部屋をでたローはため息をついた
まさか記憶がないとは
しかしあの容貌…

女性というにはまだあどけなさが残るが
なんともいえない色気がある
深い青色の髪は腰までありそうなほど長く艶やかで
少し不釣り合いな赤い目も独特の雰囲気をかもしだしている

初めはとんでもないバケモノを拾ったと思った
ある日船がゆらゆらと流されているのに気付いた
近づいてみると
その船は血にまみれていた
惨劇の後だということは目に見えてわかった
もう生存者はいないだろうとおもったが
彼女は船に1人で横たわっていた

大勢の死人にかこまれ
その中心で血にまみれながらも
無傷で眠っている女がいた
それが彼女だ

ローはこの所業はこの女がやったものだと確信した
なぜならこの女が微笑みを浮かべながら眠っていたからだ…
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