Story

□側に
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【夢主、寮生活していません。
 学園背景を重視される方は
 ブラウザバックをお願いします。】

ある休日にて
※類目線

Prrrrrr…Prrrrrr

家のソファで丸くなって真っ黒なテレビの画面に
映った自分をなんとなくぼーっと眺めてたら、
足元にほったらかしにしてたスマホが鳴った

ゆっくり体を起こして画面を確認する

《……うぃとだ》

多分10分くらい前の僕からの着信に
気付いて、かけ直してくれたんだろう

《はい》

〈あっ、類!さっき電話出られなくてごめん!
 ちょっと近くのコンビニ行ってたんだけど
 部屋に携帯置きっぱなしにしちゃっててさ〜〉

いつも通りのうぃとの声
当たり前なんだけど、落ち着くなぁ

《そうだったんだ》

〈タツキ先輩が昨日練習のとき言ってたプリン覚えてる?〉

昨日の練習中にたつき先輩がちょっと興奮ぎみに

期間限定のプリンなんだけどね、
コンビニとは思えないクオリティーなの!!
ほんとに美味しいから絶対食べてみてねっ!

って教えてくれたやつのことかな

〈うん、覚えてるよ〉

〈さっきそれ買おうと思って、コンビニ
 行ったんだけどさぁ売り切れてて!
 も〜めっちゃショックだったから
 代わりにアイス3つも買っちゃったよww〉

ほんといつも通りだ…
やっぱり電話して良かったな〜とかって考えてたら
返事のない僕に気付いて、うぃとが慌てて話し出す

〈…あっ、ごめんごめん!そんなことどうでもよくて!
 なんか用事あったんだよね!ごめん!なんだった?〉

《ううん、いいのいいの、ありがとうね》

〈ん?え、なにが?〉

《安心できたから》

〈僕なんかした?〉

《いつも通りのうぃとでありがとってこと》

〈ん〜ますますわかんないかも〉

《分かんなくていい》

〈なんか類……えっと…なんかあった?〉

《…ごめん》

〈え、ちょ、何で謝るの?〉

《僕がうぃとに電話しちゃった時点で、
 今ここで何にもないよって言ったって
 うぃとには分かっちゃうでしょ?だからごめん》

〈……うん…そっか…じゃあ、ありがとう!〉

《…は?》

〈あーだめだめだめ!なにその可愛くない声!
 アキラ先輩にまた怒られるよww〉

《なんのありがとう?》

〈え?電話してくれて〉

《……意味わかんない》

〈分からなくていいよ〉

《何で真似するの》

〈真似じゃないですぅ〜〉

《てか何してるの?ガチャガチャいってるけど》

うぃとの声の後ろでさっきから何か
慌ただしい音が聞こえる気がする

〈別になんでもない〉

《信号の音…?ごめん出掛ける用事あった?切るね》

〈あ!ちがうちがう!コンビニ!行くだけだから!〉

《え、また行くの?》

〈うん場所変えたらプリン置いてるかもしれないし〉

《そんなに食べたいの》

〈食べたいよ〜!もう口がプリンだもん〉

《ふふ、なにそれっ》

何かあった?って聞かれてもちゃんと答えられないし
かといって何もないって言ったってばればれの嘘になる

説明できなくてでもとにかく苦しくて
いつもなら練習して忘れるかじっと耐えるかで
やり過ごすけど、今日は全然だめだった

周りには迷惑かけたくないって思うのに
結局誰かに助けてほしくなって
真っ先にメンバーの顔が浮かんだけど

アキラ先輩とたつき先輩と奏先輩は今日ラジオだし
先生は確かお休みだけど、もう次の新しい振りを
考え始める頃だと思うから絶対邪魔はできない

それで気付いたらうぃとに電話してた

〈類は?いま家?〉

《うん》

〈そっか〜ちゃんと電気もテレビもつけてる?〉

《……なにそれ?》

〈類のことだから、疲れてるときは
 テレビも電気もつけずぼーっとしてるかもって
 思ったんだけど、ほんとにそうなんだ〉

《……暗くなったら電気はつけるもん》

〈もう夕方だよ?〉

《まだ全然大丈夫
 言っとくけど、エコでつけてないだけだから》

〈ふーん〉

《ほんとだからね
 ロック兄弟ほめてくれるし》

〈えらいね〉

《別にうぃとに褒めてほしいんじゃなくて》

〈わかってまーす〉

我ながら子供っぽくて馬鹿みたい
でもうぃとは怒らず笑わず、飽きもせず
いつでもこんな僕に付き合ってくれる

《うぃとはやさしいね》

〈やっと気付いたの?〉

《うん、たった今気付いた》

〈え!おっそ!おそ!何年一緒にいると思ってんのさ〜〉

《んふふ、もう何年かなぁ》

〈ねぇじゃあさ、もっとかっこいいって思わせてあげる〉

《ん?別にかっこいいとは一言もいってないなー》

〈ちょっと!細かいことはいいじゃん!〉

《はいはい、で、なに?》

ピンポーン

《あれ?ごめんちょっと待っててね》

〈はーい〉

ネットで注文した本かな…配送今日だっけ?
とりあえず携帯をソファに置いてモニターを確認する

《……えっ》

〈類〜〜来たよ〜〜〉

インターホンの画面いっぱいに
八重歯が可愛いうぃとの笑顔

いい笑顔だなぁ……って思わず数秒見つめた

〈開けて開けてっ〉

うぃとの声にはっと我にかえって
とりあえずエントランスの鍵を解錠する

びっくりしたとかなんで来たんだろうとか
ぐるぐる考えてたらすぐに、次は
部屋のチャイムが鳴って慌ててドアを開けた

〈お疲れ〜!来ちゃった☆〉

《お、おつかれ…?》

〈上がってもい?〉

《え、うん、いいけど…》

〈やったー!おっじゃましまーす☆〉

なんか語尾に星が見える気がするうぃとに
圧倒されながらも、部屋に案内して

ふと気付いた。

もう全然苦しくない。


〈うわっほんとにテレビも電気もつけてないし!〉

《え、てゆうかコンビニは?なんで?どうしたの?》

〈ちゃんと買ってきたって!はいこれ類の分ね〉

すごいドヤ顔で、持ってたコンビニ袋から
ちょっと高そうな包装のプリンを出すうぃと

いや別にそうゆうことじゃなくて…まぁ、でも

《……ありがと》

〈どう?かっこいいでしょ?
 電話してて突然あらわれるやつ!
 1回やってみたかったんだよね〉

苦しくて苦しくてどうにか助けてほしくて
電話で声を聞けて本当に安心して楽になって

でもいま目の前でにこにこしてるうぃとを見たら
苦しかったこと自体忘れられるみたいで

《…うん…ありがとう…めっちゃかっこいいよ》

ちょっと気を抜いたら涙が出そうで、
ほんとは目を見て伝えたかったけど
床を見つめたまま言った

そしたらうぃとがゆっくり近付いてきて
僕の頭に手を置いて話し出す

〈類が苦しいときにさ、
 ほんとはぜーんぶ気付いてあげたいけど…
 僕先生やアキラ先輩みたいに鋭くないし
 奏先輩みたいに的確なアドバイスもできないし
 タツキ先輩みたいに優しい言葉とか
 全然思い付かないし…

 でも類がちょっとでも頼ってくれた
 ときくらいは、誰よりも早く絶対一番に
 駆け付けて側にいようって決めてるから〉

頭に置いた手で髪をくしゃくしゃってされて
いよいよ涙が我慢できなかった

《…っ…ありがと……》

〈いっぱい泣いていいよ〉

《……な、んか……うぃとっぽくない…ね…》

〈今日はいつもの5割増しで大人な朴ウィトだから!〉

《ふふ……うそ、やっぱいつものうぃとだっ》


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