Story

□一緒なら
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ある番組ロケにて

アキラうぃと類
※パク目線

〈え〜これまじで行くの!?俺やだよ!〉

〈僕も嫌ですよ!!あーー帰りたいっ!!〉

ほんと帰りたい……もういやだーー!

今日のロケはお化け屋敷リポートで、
僕はてっきりメンバー全員で入るんだと思ったから
嫌だけどまあ諦めるしかないかって考えてたのにっ!

ジャンケンで負けた3人でって……そんな……

《でもジャンケン負けたんだもん仕方ないよ》

嫌だ嫌だって騒ぐアキラ先輩と僕の間で
唯一ひとりだけいつも通りに近い類

〈そうだけどさぁ……類はこわくないの?〉

前から思ってたけど類ってやっぱ弱点ないのかも

絶叫系も高いところも、あとは虫とかも
たしか平気だった気がする

〈だって類ホラー全然大丈夫だろ〉

そういえばホラー映画よく観てたっけ…

《うん、おばけは…怖くないよ》

やっぱりこの子強い…!!

って

〈おばけは、って何?〉

お化け屋敷でおばけ怖くないなら楽勝でしょ?
でもなんか…一瞬類の声が震えた気がした
ほんとに一瞬だけど…

《ま!ここは覚悟決めて行きましょ!
 3人でがんばろ…?ね?》

アキラ先輩と僕を交互に見上げて優しく笑う類

……そうだよね、類の言うとおりだ
よし!ここは類を見習って男らしく潔く出発しよう!

〈それもそだな……はぁ……
 んじゃ!いっちょ気合い入れて行くか!
 お化け屋敷リポート、レッツー!〉

《〈ゴー!!〉》

アキラ先輩も類の顔をみて諦めたように笑ってから
カンペに出てる台詞にしっかりつなげてくれた

〈はいOKでーす! 一旦止めます待機でお願いしまーす〉

スタッフさんの声を合図に、
お化け屋敷のある遊園地の前で撮影してた僕らは
とりあえず側に停めてるロケバスで待機することにした

〈よいしょっと……いやー類お前はほんと男前だなっ〉

アキラ先輩が後部座席の後列に座った類を
振り返りながらにこにこ話し出す

〈ほんとそうですよね!類のおかげで覚悟できた!〉

〈ふぅーん、じゃパク先頭な〉

〈ええ!?なんでそうなるんですかぁ!
 それは先輩なんだからアキラ先輩でしょ!〉

〈ちげーよ後輩なんだから先頭きって盾になれよ!〉

〈うわっ!盾って、盾って言ったぁ!〉

アキラ先輩とがやがや言い合ってるのに
類が全然入ってこない

いつもなら僕たちをみてケタケタ笑うか
一緒にアキラ先輩に対抗するか、僕を売り渡すか…
それか、まあまあって楽しそうに止めてくるのに……
なんで?

心配になって後ろの類を振り返る

〈どうした…?類〉

《……》

アキラ先輩とふたりで顔を見合わせる

なんかぼーっとしてて僕の声は聞こえなかったみたい

〈類?おい、大丈夫か?〉

僕の隣のアキラ先輩が体を後ろに向けて
類の頭をトントンって軽くたたく

《わっ、ん?どうしました?》

目をパチパチさせてやっと僕らを見る類
体調悪くなっちゃったのかな?どうしたんだろ

〈なんかぼーっとしてたけど大丈夫?しんどい?〉

《あ、ごめんごめん全然大丈夫だよ
 普通にぼーっとしてただけ》

って類はいつもみたいに笑うけど、
アキラ先輩も僕も首をかしげる

〈ぼーっとしてたって……
 類もしかしてほんとはお化け屋敷こわい?〉

僕も先輩とおなじこと思った
僕たちふたりがなんとか乗り気になるように
空気を明るくしようって無理したのかも

《そりゃ僕だって普通にこわいですよ〜
 ここのお化け屋敷有名ですもんね》

やっぱりなんか、無理してる?

〈お待たせしましたー
 撮影再開しますお願いしまーす〉

類にもう1回ちゃんと聞こうとしたとき
ロケバスのドアが開いてスタッフさんに呼ばれた

〈あ、はーい今行きます〉

明るい声でスタッフさんに返事したアキラ先輩も
やっぱりなんか考え事してる顔してた

僕もなんとなく違和感を感じたまま
仕方なく車を降りようとした、けど……

〈…類?〉

ジャージの背中の辺りを引っ張られる
感じがして振り返ったら
僕と、僕に続いて降りようとしてた
アキラ先輩のジャージの裾を類が握ってる

《あっ、ごめんなさい…》

僕の声に慌てて謝る類
でもジャージはぎゅっと握ったまま

《その…ごめんなさい……》

うつむいてもう1回静かに類が謝るのを聞いて
僕もアキラ先輩も、降りるのをやめて
さっき座ってた座席に座り直す

〈ん?どした〉

アキラ先輩が優しい声で類に聞く
ちなみに先輩がこんっな優しい声出すの、
歌ってるときか類に話しかけるときかの
どっちかしか聞いたことない

僕も黙って類の言葉をじっと待つ

《僕…あの……2人の手握ってていい?》

〈〈…へ?も、もちろん〉〉

アキラ先輩と僕の声がぴったり重なる

あまりに可愛いお願いすぎて
ちょっとびっくりしちゃった……

《……はぁ…よかったぁ……ありがとう》

心からほっとした感じで息をはく類

〈やっぱりほんとはそんなに怖かったの?〉

《あの……えっと…うん。その…暗いところが……》

消えそうな声で言う類
暗いところ…そんなに苦手なんだ
また類の大事なこと、知らなかったなぁ…

〈お化け屋敷自体じゃなくて問題は暗いってとこか…〉

アキラ先輩のつぶやきに頷く類

《お化け屋敷って行ったことなくて、でも
 遊園地のHPとか見たら、お化け屋敷の中は
 細くて長い真っ暗の迷路だって書いてて…》

声が震えてる

〈それで不安になっちゃったんだ〉

僕が頭を撫でると、ちょっとだけ類の
こわばってた体の力が抜けたように見えた

《ごめんね……》

〈なんで謝んだよ〜類が謝ることなんて1つもないじゃん〉

アキラ先輩がまた優しい声で言う
うんうん、ほんとにその通りだ

《だってほんとは自分だってこんなに怖いのに
 2人には偉そうに…》

それは違うよ類

〈男前な類のことだから、どうせ行くなら
 潔く行かなきゃって思ったんでしょ!
 ありがとう!おかげでちゃんと勇気でたよ〉

〈俺もだよ類!ありがとな。
 …よっしゃー!んじゃ思いっきりビビりながら
 3人で手繋いで頑張るかっ〉

〈よーし!ギャーギャー叫びまくりましょ!
 ねっ?類〉

《……うん!》


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