Story

□作戦D
1ページ/1ページ

ある日のダンス練習にて

アキラ泉類
※奏目線

《ふぇくしゅんっ》

〈類…風邪ですか?大丈夫?〉

今日の類は朝からずっとくしゃみしてる気がする

《んーん、大丈夫れす…花粉れす…》

そういえば確かに去年もその前もずっと
苦労してたような…もうそんな時期か

〈あぁ花粉か…すっごい鼻声だし…つらそうですね〉

《毎年なんれ…もう慣れっこれす…》

〈そうですか……薬は?効かない?〉

《注射しかいまいち効果ないんれす…》

〈行かないの?注射〉

《行かなきゃ駄目らけど……あれ痛いんれす…》

〈………〉

花粉症がつらそうなのも
鼻詰まりでうまく話せないのも分かる。

分かるけど……

《ん?奏せんぱい?》

〈……はい〉

《どうしたんれすか…?》

〈……いや、ちょっと…おもしろいなって…っ…〉

さすがに真面目な顔で、れすれす言われたら
ちょっとおもしろくなってきた……

《………え、なんれ?》

〈…鼻声…っ…かわいい、ですね…〉

《そ、その顔!絶対おもってないれす!》

〈いやっ、ほんとに…っ…〉

ほんとに思ってる。かわいい

《じゃなんれ笑うんれすっ!》

〈……っ…〉

必死な顔の類を見るとますます笑いが込み上げてくる

《も〜〜〜ひろいれす〜!》

類が頬を膨らませながら言うのと同じくらいに
飲み物を買いに行ってたアキラが部屋に戻ってきた

〈言えてねーぞ類。ひどいです、な?〉

ニヤニヤしながら類に言うとおれの隣に座るアキラ

《ら、らから!ひろいれす!》

〈1個も言えてねっつのww〉

ムッとして言い直す(けど直せてない)類はやっぱりかわいい

アキラがけらけら笑うのをみて
どんどんご機嫌ななめになる類

《アキラせんぱいらってくしゃみばっかしてるくせに!
 ……そんな笑うならもう、今日はしゃべんないれすっ》

ぷいっと顔をそらしてイヤホンをつけ
鏡の前でひとりで体を動かし始める

しまった……でもアキラがからかいすぎるからだ

〈あーあ、拗ねちゃいましたよ〉

〈えっ俺のせいなの?〉

アキラをじとりと見ると頭をかきながら困った顔をする

〈…どうしよ泉…〉

〈……おれ今日はお菓子もってきてませんよ〉

断じてモノで釣ろうなんて考えてる訳ではない
お菓子やケーキは、あくまで誠意だ。誠意。

〈俺だってそんなの持って……あ!いや!ある!〉

〈めずらしいですねアキラが持ってるなんて〉

〈懐かしい感じの駄菓子屋みつけたからさ〜
 調子のって結構色々買ったんだよな…〉

そう呟きながらリュックをひっくり返して
それらしいものをいくつかかき集めるアキラ

…確かに見覚えのある懐かしいものばかりだ

〈ほらこれとか、よく食ったなぁ〜知ってる?〉

〈知ってますよ。おれはこっちのやつよく買いましたね〉

〈あ〜うまいんだよなそれ!俺も好きだった〉

〈これもなかなか…って、そうじゃなくて〉

〈……機嫌、なおるかな…〉

〈これだけあれば…多分〉

アキラの言葉通り本当に両手いっぱい程の量がある
駄菓子を2人でじっと見つめながら言葉を交わす

不安げなアキラに集めた駄菓子を持たせ
早く行けと目でうながす

〈え!俺だけで行くの!?〉

〈そりゃアキラが怒らせたんだし〉

〈いやでも俺がくる前から泉だって笑ってたじゃん!〉

〈…はぁ……切り出すのはアキラですからね〉

〈………はい〉



約2分後。


《おいし〜〜〜何年ぶりだろ〜やっぱりおいしいなあ》

目の前でキラキラ嬉しそうな笑顔の類をみて
アキラと顔を見合わせお互いほっとする

あまり認めたくないが、類の機嫌をなおす
ことに関してのアキラとおれのチームプレーは
なかなかに見事なものだと思う

〈良かった…ほら!これもこれも食っていいぞ〉

《ほんとにっ?僕これ大好きなんれすっ》

〈まだこれもいっぱいありますよ
 全部食べていいんですからね?〉

《んふふ〜アキラ先輩も奏先輩もありがとございます!》

にしてもやっぱり類はこうやって
笑ってる顔がいちばんいい

なんて考えながらふとアキラを見ると
ゆるみまくった顔できっとおれと同じようなことを
考えながら、類を眺めていた

〈……顔、ゆるんでますよ〉

〈……お前も多分おんっなじ顔してんぞ〉

《ん?ふたりともどうしたんれすか?》

〈〈なんでもないよ〉〉


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ