Story

□2人っきり
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ある休日にて
※タツキ目線


椎名 類:いつもの出口で待ってますね!

電車の中でるーくんからの連絡を見て
思わずにやけちゃいそうになった口元を慌てて隠す

こうやって休みの日に2人で遊ぶのは久しぶりで
うきうきし過ぎて昨日はあんまり眠れなかったり…


もともと僕とるーくんは私服の好みとか似てて
ゲームとかアニメの話でも盛り上がるし
好きなケーキ屋さんもいっしょだったりって

結構趣味が合うから、前までお休みの日は
よく一緒に買い物とか行ってたんだけど……


最近は1日丸々お休みってゆうのが
少し減ってきてたから、たまのお休みは
普段たくさん頑張ってるるーくんも
ゆっくり休んだ方がいいと思って
あんまり誘わないようにしてた

そしたらこの前るーくんに緊張した顔で
話があるんですけど…って声をかけられて
どうしたんだろうと思ってたら

《…たつき先輩…その……もし、もし
 疲れてなかったらでいいんですけど!
 来週のお休みの日一緒に遊んでくれませんか!!》

ってるーくんが自分から誘ってくれた

嬉しくて、僕がすぐ返事したら

《最近全然たつき先輩と買い物とか
 行けてなくて……さみしくて…
 でもたつき先輩から誘ってくれることも
 なくなっちゃったから、きっと
 お休みの日まで色々忙しいんだろうな
 って思ってて…あ〜良かったあ〜〜》

って、ほんとにほっとした
って顔でるーくんが言うから

僕と出掛けたいってずっと思って
くれてたんだなぁって嬉しいのと、

理由も言わず誘わなくなったのは
悪いことしちゃったなって反省したのと、

僕を買い物に誘うだけですごい緊張してた
るーくんがあまりにも可愛いのとで、
思わずぎゅーってしちゃった

楽しみにしてますねってニコニコしてた
るーくんの顔を思い出しながら
約束の駅の改札を抜けると

2人の女の人を相手にちょっと困ったように
でも優しく笑ってるるーくんを見つけた

〈…今日は女の人だ……〉

これはるーくんと待ち合わせするなら
覚悟しなきゃいけないことのひとつ!
だと僕は勝手に思ってるんだけど……

あ、でも少なくともアルスのみんななら
きっと毎回ちゃんと覚悟してるはず……

いわゆるナンパってやつで
るーくんの場合、ほんとに
男の子にも女の子にも見えるから

その日の服装とか髪型とかによって
声かけられるのが男の人だったり
女の人だったり……毎回バラバラ

で、今日は女の人みたい…
よぉし、いこう…!

〈ごめんるーくん!お待たせっ〉

《あ!たつき先輩…!!》

僕が声を掛けた瞬間るーくんが
安心した顔になったのが分かった

〈あ!類くんの言ってた
 待ち合わせしてる人〜?
 うわ〜友達も可愛い顔してるぅ!〉

あ〜るーくんったらまた名前教えちゃってるし…

女の人にまじまじ顔をみられて
ちょっとだけ緊張する

〈……遅くなってごめんね、じゃ行こっか〉

〈あの〜!私たちもこれから買い物でも
 しようかなぁって感じなんですけど
 良かったら一緒に遊びません〜?〉

るーくんの腕を引いてしれっとその場を
離れようとした途端やっぱり引き留められる

今までならきっと、どうやって断ろうって
もっとちゃんと考えてから行動してたん
だろうけど……今日ばっかりは、とにかく
早くるーくんと2人になりたかった

話したいこともいーっぱいあるし
るーくんがきっと喜ぶような
ランチのお店ももう頭に浮かんでるし

楽しみにしてた今日の時間を
これ以上は邪魔されたくなかった

〈ごめんなさい、今日は2人っきりで
 遊びたいんだ。ごめんね?〉

2人っきり、を強調しながら
わざと恋人繋ぎした手を顔の前にあげて
できるだけ笑顔で言った

〈え?……あ……え?えっと……〉

あきらかに言葉を失って
目をぱちぱちしてる女の人2人を置いて

るーくんと繋いだ手をそのまま
引っ張りながら早歩きで駅から離れた


ふぅ、もう大丈夫かな

〈るーくんいつもごめんね、
 もっと早く行けばよかったね……〉

道の端で1度立ち止まって、
るーくんを振り返りながら言うと

るーくんが首をブンブン振って
申し訳なさそうな顔をする

《僕こそごめんなさい…
 ちゃんと断らなきゃって思うのに
 今日もうまく言えなくて…》

〈僕は全然気にしてないよ!大丈夫
 るーくんはみんなに優しいけど
 女の子には特に優しいもんねっ〉

並んでゆっくり歩き出しながら
改めて隣のるーくんを見る

グレーのジャケットに黒のハットっていう
格好のせいもあって見慣れてる整った顔も
いつもより少し男の子っぽくみえる

これじゃ女の人に声かけられちゃう
のも納得だなぁ…うん、かっこいい…

じーっと見てる僕の視線に気付いて
るーくんが首をかしげる

〈あ、なんでもないよ!
 ただ今日のるーくん
 かっこいいな〜って思って〉

《え!ほんとですか!うれしいっ
 久しぶりにたつき先輩とお買い物だから
 気合い入れておしゃれしたんです!》

でも、褒められた〜って隣で
すごく嬉しそうに笑うるーくんは
やっぱり可愛い女の子だと改めて思う

《あ!それより先輩
 さっきのってわざとですか?》

〈えっ?さっきの?〉

《さっき助けてくれたときの。
 僕を女だって分かってて声かけてきた
 男の人にならまだしも、僕のこと
 完全に男だと思ってる女の子相手に
 あんな風に言うと思いませんでした》

〈あ、あぁ〜…〉

《びっくりさせようと思って
 わざと言ったんですよね?
 さっきの女の人2人とも
 固まっちゃってましたもんね》

僕までびっくりしちゃいました〜
ってちょっと楽しそうに笑うるーくん

確かに冷静に考えたら驚かれて当然だったかも…

まぁ冷静になれなかったから、
あれしか出てこなかったんだけど

でもそれを言っちゃうとなんだか
余裕がないのがバレバレでちょっと恥ずかしいし…

〈うーん、まぁそれもあるんだけど
 ああ言ったらさすがに、すぐ
 引き下がってくれるかなって思ったの〉

ちょっと色々考えて言った風に…
でも嘘は言ってないもん、たぶん。

なるほど〜ってるーくんが頷く

〈せっかく楽しみにしてたるーくんと
 2人だけの時間だからあんまり
 邪魔されたくなかったし、ね?〉

これは本心だからとるーくんの
顔を軽く覗き込みながら言ったら、
るーくんが慌てて
自分の両手でほっぺを隠した

〈どうしたの?〉

《…いや、その、たつき先輩って
 急にそうゆうこと言うから…》

あぁなるほど照れてるんだ
って分かって相変わらず反応が可愛いな〜
なんて思いながら見てたら

《……でも、僕も今日すっごく
 楽しみにしてたから…たつき先輩も
 同じでいてくれて嬉しいですっ》

なんて、るーくんが赤い顔で
僕のこと見上げながら言うから…
次は僕が両手で顔を隠すばんだった


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