およめさん

□いいなずけ
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繋いだ手

とことこと幼い子供が2人歩いている。

赤毛の子供が黒髪の子供の手を掴んで半歩先を歩いており、引っ張られる形になった黒髪の子供はぽやぽやと笑っていた。

「嬉しそうだな、三日月」

「うん」

そばでそれを見ていた鶯丸がそう言うと、三日月宗近は一層にこにこして頷く。

「おおかねひらと、いっしょだから」

途端、大包平がへらっと顔を緩めた。幼くなって余計に分かりやすくなったな、と鶯丸は思う。

先程の事故で身体共に幼い子供になってしまった2人は、ほんの少しの間にすっかり仲良くなっていた。まるで以前からずっと一緒だったかのように、互いの手を離さない。

けれど、――記憶のどこかで、ようやく一緒にいられるようになったのだと、気づいているのかもしれないとも思う。少なくとも三日月は、この状況を殊更喜んでいるように見える。

今までは手を繋ぐどころか、穏やかに話しているところすら見かけなかった。一緒にいるというだけで喜ぶのは、そのことが影響しているのではないか。

そう思うと、三日月のことがいじらしく思えて、鶯丸は思わず小さな頭を撫でる。

「うぐいすまる?」

不思議そうに見上げる三日月は、そんな自覚はないだろうが。

「いや、よかったなあと思ってな」

曖昧な言葉に三日月はますますきょとんとしたものの、その頭をもう一度撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。

「その気持ちを、大事にするといい」

「…?あいわかった」

どう考えても分かっていない顔でそう返事をした三日月は、大包平が立ち止まったことに気付き、前に回り込む。

「おおかねひら?」

大包平は、繋いだままの手とは反対の手を三日月に伸ばした。そして、顔を覗き込んでくる三日月の頭を撫でる。

「おれもなでる」

「…!」

どうやら、真似をしたくなったらしい。うっかり吹き出しそうになる口を押さえて見守っていると、三日月は嬉しげに頭を寄せる。

そして、大包平が満足するまで、三日月はその場でじっとしていたのだった。
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