愛情1リットル108円
□9:さぁ終わろう
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弱小高の快進撃だと、実況が興奮ぎみに言っていた。
俺は今、表彰台の上にいる。
無事、県予選を突破して出場したインターハイは優勝という結果で終わって、俺は渡されたトロフィーのリボンを興味無さげに弄る。
目の前、真っ正面の観客席を見上げるとニコニコ笑顔の真波と目が合った。
『えー、それでは優勝校、箱根学園のエースである高瀬さん!今回の優勝おめでとうございます!今の心境は!?』
興奮しきってマイクをこちらに向ける月バスのリポーターの人からマイクを奪って俺は観客席にいる真波に笑いかけた。
『待っててくれてありがとう。なぁ真波、俺はお前らの役に立てるかな?』
すると真波は驚いたような顔をしたあと、ふわりと、見たこともないほど綺麗に微笑んだ。
『えーっと…高瀬さん?』
ざわめく会場にリポーターの不思議そうな声。
俺はにこりと、あっけらかんと笑ってマイクに向かって宣言した。
『俺バスケ辞めます。最後にインハイ優勝できて良かったぁ。有り難うございました』
さらに騒がしくなった観客と、言葉を失った実況、リポーターにお辞儀をして俺は表彰台を降りていく。
すべてを失った俺にバスケを与えてくれた。お前がバスケという新しい世界を教えてくれた。
お前がいなくなったあと、お前に何度も語られたインハイ優勝を目指して一人で頑張った。
でも、インハイで優勝して見えたものはきっとお前が想像してたものじゃない。
俺がインターハイ一位の表彰台から見たものは、世界一綺麗な真波の笑顔と、ロードという真新しい、ピカピカな世界だった。