咲く花
□06
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「隠れて」
さっきからお兄ちゃんたちが止まったら止まる、振り向いたら隠れる、の繰り返しである。早く合流すればいいものの、お兄ちゃん達の様子が気になってしょうがないミクリオ。
「今度はどうしたの?」
「スレイが何か見てる、あれは…弓…?」
透き通った水のような色をした大きな弓をお兄ちゃん達は見つめていた。不思議な力を放つその弓は、おそらく…
「あれは神器だよ」
「神器?」
「神器は、導師と天族が行う神依の姿を決定づける、神依の型のこと。ライラだったら聖剣が神器。導師との契約には必要な物なんだよ」
「そんな知識どこで手に入れたんだ?」
「ジイジからこっそりいろいろと…」
はぁ…と溜息が頭上から聞こえてくる。すると、お兄ちゃん達が移動した瞬間、ミクリオは弓に近づいた
「これが神器…不思議な力を感じる」
「これは、水の神器だから、ミクリオがもしお兄ちゃんと陪審契約をするのなら」
「これでもいいのか?」
「うん」
置かれていた弓を持ちあげ、全体を舐め回すように見る。陪審契約をする気持ちは変わらず持っているみたいだということはわかった、あとは…
「ミクリオ」
答えを聞くだけ
「陪審になることに、後悔しないでね」
「ユイ…?」
「そして、もしお兄ちゃんが迷ったら背中を押してあげて…お願いね」
「わかってるよ」
頭を軽く二回叩かれ、ミクリオはまたお兄ちゃん達を追いかけ、進むために手を差し伸べてきた。
反対の手で持つ神器を手にしたことで、ミクリオの表情はさっきと違ってたくましく見えた。
安心したように手を取ると、リードして前を進むミクリオの後ろ姿が見えて、気持ちが整った彼に向かって聞こえないようにありがとう、と呟いた。