咲く花

□04
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少しむかしの話



私が物心ついたときにはお兄ちゃんの存在があった


いつも一緒にいてくれて、両親がいなくて泣く私の手を握ってくれて、暖かくて優しい私のたった一人のお兄ちゃん


そして、もう一人、私の隣にいつも一緒にいてくれた、お兄ちゃんと同じくらい大切な人。



ミクリオ


「ん…」

重い瞼を開けると初めに見えたのは天井。ふかふかのベッドで自分が寝ているのだと認識したのが少し時間が経過してからだったのは体もだるく、頭も痛かったからだ

「お目覚めですか?」


声のする方へ顔を向けると、ライラが笑顔でこちらを見ていた。

「おはようございます、ユイさん」

「おはよう…ライラ…」

重い体を起き上がらせようとしたが、両手が身動き取れないようになっていることに今気づいた。

「お二人がずっとついていたんですよ?」

ライラが微笑みながらそう言う。右にはお兄ちゃんが、左にはミクリオが、私の手を握ったまま、ベッドに伏せていた。寝息も微かに聞こえていた。

「スレイさんは3日間、ユイさんは4日間も寝ていたのですよ?心配しましたわ」

「4日!?」

お兄ちゃんよりも多く寝ていたらしい。真実にため息交じりの息を吐くと、ライラが近くの椅子に座り、話す

「ユイさんが目覚めないことを深く心配していました。ベッドで寝ることを勧めたのですが、こうするって聞かなくて…」

「私、身体が弱くて、よく熱出したりした時はこうやって2人がいてくれたんだ…」

「そうだったのですね…」

「まさか、この歳になってまでこうなるとは思ってもなかったけど」

「お二人はユイさんをとても大切にしていらっしゃるようですね」

「うん、本当に、感謝しきれないな…」

ギュッと両手に力を入れると、いつまで握っていたのだろうか、手がとても温かかった。

「ありがとう…」

そう呟くと、ぴくりと2人の体が動き、ゆっくりと目を開けた。
体を起こして、まず私を見て驚いた2人に肩を掴まれた。

「ユイ!もう大丈夫なのか!?」

「びっくりしたよ!急に倒れるから!!」

「それは君も一緒だったじゃないか!」

「先に倒れたのはユイだろ!?」

「あの…ユイさんが苦しそうですわ…」

肩を揺らされて完全に目が回ってしまった私を見て、2人は声を合わせてごめん!と言って離れた。体がを起こして、後ろの背もたれに寄りかかりながら、改めて2人の心配そうな顔を見たら笑いが込み上げてきた。

「相変わらずだね…」

「起きて第一声がそれ?」

「いや、嬉しかったよ…ありがとう。」

「そういえば、ユイ。お腹空いてない??」

「空いた…かも…」

「4日間何も食べてないもんな!俺もらってくるよ!」

お兄ちゃんが外を出たあと、ミクリオが腕を組んで怖い微笑みを見せてくる

「食べながら説明してもらうからね、ユイ」

「承知してます…」

私たちのやりとりを座って見ていたライラから、くすり、と笑いが溢れた
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