HUNTER×HANTER
□命令
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命令
ゴトーは優しかった。
父も母も、兄妹たちも、もちろん優しい。
でも、ゴトーは少し違う優しさがあった。
訓練の時もそうだった。
出来ることが当たり前な父や兄。
出来ないことのが多い私。
生まれた疎外感。
嫌だとつらいと泣いた時、励ましてくれたのはゴトーだし、耐え抜いた後、必ず褒めてくれたのはゴトーだった。
…心淋しい夜傍にいてくれたのも。
そこには優しさと暖かさがあった。
母にも父にもないもの。
それをゴトーは持っていた。
そんなゴトーが大好きでずっと傍にいてほしかった。
でもある日、キルとアルカを守ると言って出ていった。
行って欲しくない
嫌な予感がして、喉まででかかった言葉。
でも、ゴトーが行くと決めたなら…
その言葉を飲み込んで、一つだけ命令をした。
帰ってきて
強く強く放った言葉。
それ以上は何も言わなかった。
それ以上、口を開けば涙と一緒に引き止めるための言葉が溢れだしそうだったから。
必ず…
いつもの優しい笑顔を浮かべそう言った。
それなのに…
いつになったら帰ってきてくれるの…
宙に弾いたコインが手の間をすり抜け床へと落ちた…。