ゾルディック
□no.11
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イル兄は無駄にモテる。
こういう場にくると痛感する。
背が高くて、顔立ちも整ってるし、スーツも完璧に着こなす…。
別れてすぐにイル兄は女の子に取り囲まれた。
その光景に慣れてはきたものの、気に入らないのは今の昔も変わらない。
やっぱりイル兄の元へ行こうと手に持っていたワイングラスを置くと、こっちが取り囲まれた。
正直、イル兄以外の人に興味はない…
それでも、仕事だから、ここでボロを出すわけにはいかないから、と自分に言い聞かせて取り囲む男たちの相手をする。
笑って、返事をして、相槌をうって…
数分、適当に相手をし軽く会釈をして、その場を立ち去った。
話を聞いてる間だって、イル兄のことが気にかかり、気が気じゃなかった。
ベタベタと触る女に、やたらと近い女…
人の波を掻き分けイル兄の元へと向かう。
目がハートになっている女たちの間をすり抜け、イル兄の裾を掴むと、そのまま引っ張り会場の外へ出た。
「どうしたの?名無しさん」
不思議そうな顔をするイル兄のネクタイを掴み、引き寄せキスをする。
ゆっくりと口を開き、舌を絡めた。
「名無しさん?」
「…イル兄、モテすぎ…」
「あぁ、ヤキモチ?」
「…っ」
そうなんだけど…
ずばりと言われると恥ずかしく俯いた。
「名無しさんも随分楽しそうだったけど?」
耳元で言われ肩が震える。
逃げようにも後ろは壁。
抱え込まれるように腰に置かれた手に引き寄せられる。
「イル兄…っ、戻らなきゃ」
「なに言ってんの?名無しさんが連れてきたんじゃん」
「そうだけど…でもここじゃ…」
「ま、そうだね。ここじゃ、まずいか」
「…」
「しょうがない、家まで我慢してあげるよ」
「その代わり…家に帰ったら、ちゃんと最後までオレの相手しろよ」
耳元で放たれた言葉。
ぽんと肩を叩き、イル兄が会場へと戻っていった。