蔵書

□仮にそれがあったとして[中也×乱歩]
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「どう?痛い??」

指、足腹、踵が穿つ。にやつく青年に抵抗するも、甘さと鋭さを伴う感触に、その言葉は情けなく震わされるしかなかった。

「ん、く…、ぁっ」
「ふふ、いい眺めだよ。全く愉快極まりない」

器用に脚を踊らせる乱歩。瞳には、愉悦とも焦燥とも取れる色が宿り、身の危険以外にも不安を煽るものがあった。上位に立つのは彼だというのに、何処か怯えている様な表情をしているのは何故だろうか。しかし、それを問える余裕はさしもの中原も持ってはいなかった。

「やめろ、って…!」
「やーだよ」

聞く耳を持たず、弄ばれる。痛みを伴っているのに、癖になりそうになる自分は、ある種変態なのだろうか。否そうに違いない。しかしいずれにしても、屈辱であることは変わらない。

「う、ぁ…っ、はぁっ…!」

本命でも、好意すらも抱かぬ相手に自身を弄られて何が嬉しかろう。だがそれでも、下半身から脳天までを貫く悦楽の前に、身を横たえたくなるのも事実。

「あっ、んん……ッ」

一頻りいじられて、肩を大きく震わせた時、白濁とした液体が溢れ、腹這いに中原の脚を伝った。それは乱歩の右足にも色を付け、ぬるりとした感触に彼は瞳を見開いた。白く濡らす液を眺め、呟く。

「うわー…何かぬるぬるしてるう…」
「っふざけんなよクソが…!誰の所為だよっ…!!」

けらけらと笑む青年に、先刻の表情は無い。あの顔は一体何だったのだろうと思いつつ、しかし、中原はひどい憤りを隠せずにいた。

「そんなにひくつかせながら云われても、なーんにも怖くないね!変態君っ♪」

堪忍袋の緒が切れたとは正にこのこと。いや、元々中原は短気であるし、袋の緒なぞあって無いようなものであったが、今回ばかりはブチッとなった。
仕返しを目論み、一先ず離れかけていた右足を掴む。己の体液に顔をしかめたが、何より、脚を掴まれた刹那の乱歩の声に驚かされた。

「ひゃんっ!?」
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