蔵書

□仮にそれがあったとして[中也×乱歩]
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「ふっふーん♪マフィアきっての体術使いっていうのも、他愛無いねえ♪」

笑みを浮かべて中原中也を組敷くは、間違える筈もない、あの江戸川乱歩だった。細められた瞳が爛々と光を帯び、射るような視線を直接肌に感じる。



離れた歳は四つ。所属組織も主義も、多くが異なる彼等は、常人のそれとは違う些か特殊な関係だった。



「はッ、笑わせるな迷探偵。今の言葉、誰に向かって云ってんだよ?」
「何か上手いこと言った積りみたいだけど、全っ然面白くないよ、中原君」

額に指突を喰らわせ、乱歩は右膝を仰向けになった中原の内腿の付け根に押し付けた。下半身を仄かに圧迫される感覚が中原を襲う。

「っ……!?」

びく、と体が震え、同時に寝台が軋む。
金銭に余裕の少ない男女や、何の柵も無く悦楽に浸る事を望むもの、そんな人々が訪れるこの内の一部屋。彼等が有する一部屋とは同じ「部屋」でも、似ても似つかない程、ここはボロい場所だった。しかし、二人にとってこの場所こそが、各々の闇を晴らせる唯一の場所であった。

「面白い反応をするじゃないか。いいね、痺れるね」

彼はさも愉しそうに口元を歪めた。そしてそのまま黒い革のベルトへと手を伸ばし、金属音が響いたと思えば、それは既に引きずり下ろされていた。

「馬鹿、やめっ…」
「♪」

有無を言わさず、“素足”で強く露になったそれが押される。なんとも言えない鋭い刺激に、思わずくぐもったうめき声が零れた。

「んぐ……ッ」
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