蔵書

□怖い話[乱歩+中也]
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「やあ。素敵帽子君」
「・・・」

何をするでもなく、横浜の街をぶらついていた所に、突如として現れた存在。青天の壁歴、とでも云うのだろうか、中原は、見知らぬ青年に瞳を瞬かせた。探偵を気取ったかのような、そんな成りをしている青年に、当然見覚えは無く、脳内に疑問府を浮かばせる。
はて、と考えたときに閃いたのは一つしか無かった。
偶然か、はたまた必然か。その声と「素敵帽子君」とかいうふざけた呼称は、彼の中で僅かに記憶に残っていた。眼前にいるは、異能力集団武装探偵社の一人だ。しかし、名は知らない。

「誰だ手前」

先日の報復に来たというのなら、喜んで相手をしよう。目を光らせ、相手の出方を観察し始める中原。
好きなものに喧嘩を挙げているだけあって、真っ先に浮かぶのはやはり「そっち」方面なのである。
血をたぎらせる中原に対し、探偵社の青年はにっこりと笑って、

「世界が誇る名探偵、江戸川乱歩だよ♪」

と、敵意の「て」の字も見せず、しかも語尾に「♪」付きで答えた。
というか、何だその根拠の無い自信は。通俗創作の読み過ぎではないのか。
謎の不信感を覚える。
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