―4th―

□恋情サイレント
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 それは徐々に俺の世界を蝕んでいった。
自分でも聴覚が落ちている事を自覚していた。
急な耳鳴りがしたり、音声が二重に聞こえたりするのだ。
さすがに変だと思った俺は病院に行ったが、医師には突発性難聴だと宣告された。
原因は分からなかったし、俺も見に覚えが無かった。


 ―突発性難聴。
その病名は聞いた事が無かった。
必死で調べた結果、それは治らないかもしれないのだという。
今はまだ片方は完全に聞こえているが、いつ両耳から音が消えるか分からない。


 その恐怖と隣り合わせになって俺は生活していかなければならないのだった。
あいつの声が聞こえなくなるのは、辛い。


 心配はかけないように。
足を引っ張らないようにしよう。
俺のせいでまだ誰かが傷つくのはごめんだからだ。


 仗助とは付き合って大体2ヶ月少しだが、かなり信頼している。
だからこそバレたくない。
もしバレたらいっそ喧嘩でもして、俺なんかとは別れて可愛い彼女でも作って欲しい。


 好きだけど、好き以上にアイツには幸せになってほしい。
これはエゴだろうか?


 いや、きっとアイツも同じぐらい俺の事を好いているはずだ。
互いを思っているから分かる。



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