―1st―

□驟雨と予感
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 窓から見る外は暗く、かなりの土砂降りだった。
窓につく雨の雫はすぐに下に落ちた。
ディオは帰ってきていない。
雷も心配になってきていた所なのにまだ姿を現さなかった。
―何か良からぬことに巻き込まれているのだろうか。
暗闇に便乗した犯罪はここ数年多い。
特に少年や少女などを対象としたものが大半を占めている。
さすがに心配になった僕は、父の言う事も聞かず屋敷を飛び出した。








「ジョジョ?」

 屋敷の敷地を出てすぐそこにディオはいた。
少しクセのある金髪に滴る水滴。
異様な雰囲気を醸し出すディオは、冷たい手で僕の頬に触れた。
雨で濡れたディオの手からは体温が殆ど失われていた。

 白いシャツも水分を含み、肌にピタリと張り付いていた。
シャツが透けて肌が見えている。

「大丈夫かい?ディオ」

「う、るさい。俺に構わないでくれ」

 僕が差し伸べた手を片手で振り払い、睨んだ。
長い睫毛から落ちる雫も、何故だか泣いているように見えた。
弱っているのかもしれない。
手は冷たいのに顔は赤い。ディオの纏う空気もなんだか熱い気がする。

 ディオが言うこともお構いなしに担いで屋敷内へと運んだ。
ディオの部屋にあるベッドへと彼を下ろすと、軽く息をついた。

 ディオを見ると、荒い息遣いで喘いでいた。
病人にこんな事を思うのは不謹慎だと思うけれど、色っぽい、そう思ってしまった。
ドキリと跳ねた心臓が波打つ。

「辛くない?」

 流石に濡れたままの服をいつまでも着せているわけにはいかないので、
替えの衣類を彼のクローゼットから適当に取り出す。
いつもは「俺の物に勝手に触るな」と怒る彼も今日は怒らなかった。
いや、怒る気力がなかった、が正しいだろう。

 彼のシャツのボタンを一つずつ丁寧に外していく。
露になった肌はとても白かった。
シャツを脱がせ、水滴を拭き取っていく度にピクリと反応する姿が可愛い。
義弟相手になに不埒なことを考えているんだ
と自分自身に言い聞かせるが、本能は中々従ってはくれなかった。

「・・・っ、は・・・ぁ」

 彼の口から零れるこの吐息も。
雨に濡れた金色の髪も。
赤らみを帯びた整った顔も。
今は自分の欲の対象でしかなかった。

「ごめん」

「なん、でだ?」

 ディオは知らない。
僕が今君にどんな感情を抱いているのか。
知ったらきっと君は蔑みの眼で僕を見下すだろう。
知られたくない。

「ジョジョ・・・」

 そんな顔で僕の名前を呼ばないでくれ。

「聞いて、いるのか?」

 一気に発することの出来ない言葉を途切れ途切れに紡ぎだす。
そして僕はやってしまった。








 ディオの唇に自分の唇を押し当てた。









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