―5th―

□凍傷エーテル
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 ジョルノのその言葉は全身に麻酔を打ったように俺の体を凍りつかせた。


―僕達の子供が欲しいんです、ミスタ


 もし俺が男じゃなかったらきっと、返事なんてすぐ答えられる。
女だったらもっと容易な問題だ。
だが、俺が男だという事を抜きにしても、ジョルノの能力を使えば可能なのだ。
それでもそんな考えに行き着くコイツが怖かった。
単に子供が欲しいなら女でもつくりゃあいい。
だが、そういうことではないのだ。
ジョルノは、俺との子供が欲しいと言った。


「僕の言っている事が理解できませんか?」


 有無を言わせぬ冷ややかな目線で俺を精神的に追い詰める。
震える手で腰のピストルに手を伸ばそうとするが、ふとジョルノの過去を思い出した。

 最近聞いた幼少期の話。
ジョルノには父親と呼べる人も母親と呼べる人も居なかった。
父親には逢った事がなく、母親からは邪魔者扱いされてきたのだから。
もしかしたら家族と呼べる存在が欲しいのかもしれない。
でもジョルノは哀願したわけではない。
おそらくコイツの中の触れられたくない部分だからだ。

 俺は、罪悪感と同情から銃を抜けずにいる。
でも一番はジョルノを愛しているからだ。


「僕の事、どう思っていますか?」


 勿論好きだし、愛している。
けれど、恐怖のせいか、即答することが出来なかった。


「好き、だ。でもよ、お前にはもっと、選ぶほどの女が居るんだぜ?だから、」


「僕は貴方が良いと言っているんです。ねえミスタ。
お願いですから僕を、僕を捨てないで―」


 俺の言葉を遮り、ジョルノは哀しげな眼で懇願した。

 俺は敵わない。
ジョルノのこの眼には弱かった。
無言で頷き口付けを交わすとジョルノは俺を、自分のベッドへと押し倒した。


「嬉しいですミスタ」


 ジョルノは笑った。
俺は自分でも知らぬ間に帽子を脱ぎ捨て、OKのサインを出していた。

 触れられた部分が、凍ってゆく感覚。
いつもは熱くて仕方ないはずなのに。
これは一体何なのだろう。
まるで低温火傷をしているような。

 ジョルノへの気持ちが冷めたわけではない。
むしろ、今が一番愛おしいと感じるくらいだ。
なのにどうしてこんなに冷たいのだろう。








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