―4th―

□恋情サイレント
3ページ/5ページ






 バレた。
なんで俺って昔から嘘が下手くそなんだろう。
兄貴にも言われていた。
馬鹿正直で嘘なんかつけない奴だと。
今になって身に染みる。
目の前にいる仗助は、怒った時のあの目をしていた。
まあ自業自得だよな。


「俺、馬鹿だからわかんねえんだ」


 甘え方だって嘘のつき方だって分からない。
心配もかけたくない。
どうすればいいか分からなくて頭の中の情報が交差していつも混乱している。


「黙ってたのは悪かった。
でも仗助に迷惑かけたくなかった。
だから仗助、俺と別れてくれ」


 嫌われたよな。
言わなきゃいけないことも隠して隣に居たのだから。
だから自分から突き放さなきゃいけない。
仗助から距離を取って俺は行く宛てもなく走った。


 俺の選択は間違っていない。
でも俺の手元には結局何も残らなかった。
一体幾つのものを失えば俺は幸せになれるんだろう。
難しい幸福論は俺をどんどん不幸にする。


 横断歩道を渡ろうとした直後、片耳しか聞こえなかった俺は左から来る車に気付かず、覆うクラクションが反響した。


 点灯するライトと、赤信号に変わる際の音が、俺を現実へと引き戻した。






















次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ