短編

□ハツコイ
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悪魔の少年は、種族の違う少女に恋をしてしまった



いつも自室の窓辺から空をながめていた少女

太陽が眩しい青天に微笑みかける姿がキラキラと輝いて見えた

厚い雲が空一面を覆う日の雨音に合わせて歌う少女の寂しげな鼻歌がはかなくて、胸が締め付けられるようだった

夜空に舞う流れ星に願いを込める切実さに、ただその願いが叶うことを祈った


少女に気付いてほしかった

少女に怖がらないでほしかった

少女にそばにいることを許してほしかった

少年は必死で考えた

どうすれば笑顔を見せてくれるか

どうすれば隣にいてくれるか

黒い翼をはためかせて


幼いながらにずっと ずっと


毎日少女を眺めてはその方法を探し続け


考え抜いた末に出た答えは




  ‘‘花を贈ろう’’


少年の世界に淡く咲く小さな可憐な花


その花の存在を思い出し、急ぎ自分の世界に、魔界に戻って


花をたった一輪だけつんで


少女に似合うだろう白いリボンを飾って



この恋心をわかってもらえるだろうか


‘好き’の思いを理解してもらえるだろうか


もし思いに応えてもらえなくても、この花を受け取ってもらえたら、きっとしあわせになれる


それが、悪魔として生まれた少年の、健やかな願い

少年は何も言わず、何も言えず

ぐっと少女に花を押し付ける

少女に似合いの可憐で愛らしい花を





――しかし 少女の世界でその花は毒にしかならず――



その花に触れるより先に、人の子は死んだ



少女を殺してしまった

外ならぬ、少年自身の手で


悲しくて、苦しくて、胸の奥深くから溢れる叫びは、少年の声帯をひねり潰した

それでも歎きはおさまらず、零れた涙が少年の頬をえぐって赤い血の筋を作った





それでも


緩やかな時の流れは、そっと少年を癒してくれた


何世紀もかけて、青年に成長した悪魔



少女を‘諦める’術を身につけて…


青年は悪魔の仕事、人間をおとしめる甘い囁きを、かすれる喉で呟きながら




たまに少女を思い出しては、あの花を握り潰して憤りを抑え、


今日もまた、人々に堕落への道しるべを行うのだ


 

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