いにしえほし

□第11話
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光に包まれたオズが次に目を開けた時、横たわる状態で腕の中にはリオが、そして側には兄がいた。

リオは意識が無いようでくたりと力が無く、ルトも目覚めたオズにわずかに焦りを見せる表情で近付く。

「…兄貴」

掠れた声が、自分がどれほど憔悴しているかを物語った。

「大丈夫か」

「…ここは?」

ルトの問いかけに頭が働かず、薄暗い森林地帯を呆けながらも見渡して。

「都市の外れだ。白神殿から離れている」

ゆっくりと体を起こしながら夕暮れに気付き、

「…兄貴!」

兄の腹部を彩る血の染みに一気に頭が覚醒する。

「白神殿から逃げる時に少しやられただけだ」

気にするなとルトは身を引くが、オズは構わずルトの衣服の腹をはだけさせた。傷口は死ぬほどではないだろうが深く、血もまだ滲んでいる。

オズはすぐに能力を発動させ、ルトの傷口を血液で固めた。

応急処置程度にしかならないだろうがまだましのはずだ。

後はリオが目覚めてくれれば癒すことが出来るが。

「何があったんだ?」

オズは中庭で光に包まれたリオに手を伸ばしたところで記憶が飛んでいる。

その後から今までに何が起きたのか訊ねれば、痛みを堪えるように木の幹に背中を預けながら、ルトは静かに何が起きたのかを教えてくれた。

オズとリオが消え去り、ルトはその後を追った。ももとファルナラは突如現れた半透明の男に奪われて、已む無く自分だけがあの場から逃れた。

白神殿の通路からオズ達を追って出た先は白神殿の外で、大量の王軍に囲まれはしたが、リオを守る自然の風がオズとリオを引き寄せたルトごと3人を浮かばせて都市の外れの森林地帯まで運んでくれたと。

ルトの腹部の傷は、逃げる途中に術者から食らったものらしい。

「…ももとファルナラさんは?」

「さあな…」

2人の事はわからない。

わかるといえば、半透明の男に捕らわれたということだけだ。

救えなかったノーマとそら。奪われたファルナラともも。

「…」

言葉を無くし項垂れるオズの肩を、ルトは励ますように静かに叩いてくれた。

「ん…」

そこに、リオがぐずるように眉をひそめる。

「リオ…」

オズはすぐにリオの頬を撫でるように手を置き、

「…オ、ズ?」

唇を開いたリオに、安堵の息が小さく漏れた。

リオもまだ呆けているらしく、上体を起こしながら辺りの気配を探り、頭を押さえる。

「ここ…どこ?」

目覚めたばかりのオズと同じように首をかしげるリオに、ルトは先ほどと同じ説明をゆっくりとリオに話してくれた。

話す間にリオも意識をゆっくりと冴えさせて、ファルナラとももが囚われた事実に青くなり、

「…リオ、あの男は何だ?」

最後にルトに半透明の男の事を問われて白くなる。

引きつる表情は、あの男が何者であるかを知っている。

リオを「我が姫」と呼んだ、あの男を。

男の存在に悲鳴を上げたリオを守るように白神殿は不思議な光の糸でオズごと別の場所へ移動させた。

そらを介して現れた男はリオに腕を伸ばしたが、光に阻まれてしまったのだ。

リオは怯えるように表情を固くして俯いてしまう。

オズならばいつもここで諦めていた。リオが話したくないなら構わないと。

だが今訊ねているのはルトだ。

「兄貴…」

「話すんだ」

オズはわずかに咎めるようにルトを見るが、ルトはリオから目を離さなかった。

「ファルナラとももは、あの男に囚われたも同然だぞ?」

話さなければならないとでも言うように真摯に。

リオはそっとオズの服をつまむと、やがて観念したかのように顔を上げた。

オズに悲しげな表情を見せてから、少し下に戻して。

「…ずっと…夢に出てきた人」

今にも消えてしまいそうな声で、恐怖に怯えるようにオズの衣服をさらに強く握りながら。

「夢?」

ルトは意味も解らず眉をひそめるが、オズは気付いた。

「…悪夢か?」

問えば、頷かれる。

「昨日、ももちゃんに連れられて中庭に行ったら、私には花は見えなくて、でも白い何かがあるのはわかって…」

リオを守る風が、リオに「花に触れるな」と示してくれた。

だから離れようとしたが、花はももを介してリオに触れ。

ももは、リオと花が運命だと口にした。

リオは酷く拒絶したが、半透明の男はリオを我が姫と愛しげに呼んだ。

 
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