いにしえほし

□第5話
2ページ/12ページ


−−−−−


夜から行われた暴行から数時間が過ぎ、ファルナラは朝食の席で出された食事には一切手を付けずに机に項垂れていた。

両腕を机に置いて額を預ける姿は泣いているようにも思えて周りの者達が困惑している。

泣いてなんかいない。

だが体が重く苦しい。

クロードに無理矢理絶頂を与えられて心が潰れたのに、その後にレスカにまでいいように蹂躙されて。

レスカに押さえつけられ、強く抱き締められた体が痛い。遠慮もクソもなく昂りを打ち付けられた下半身が痛い。

なによりその後、全てを投げ出すように心の内側をぶちまけたファルナラに対して怒り狂ったクロードの行為が、未だにファルナラを苛み続けている。

体が重いのも食事に手が行かないのもそのせいだ。

酷い。

もう何度目かもわからない思い。

クロードは明け方近くにファルナラを解放した。

ファルナラが告げた言葉を撤回するならば許してやると、彼は太い鎖を大量にファルナラの膣内と肛門内に捩じ込み、引き抜きと責め苦を与え続けて。

肉壁が傷付き裂けて血が溢れようが構いはしなかった。

ファルナラが口に出来たのは自身の絶叫だけだ。

心の支えに、この責め苦が終わればルトが優しくしてくれるからと自分に言い聞かせて。

誰かが助けてくれるという思いは考えないようにして、ひたすら時が過ぎ去るのを待った。

ファルナラに与えられる拷問をレスカは劣情を帯びた瞳で見つめて、ルトは視線を合わせてはくれなかった。

激痛に苛まれながら、それでもクロードに従わなかったのは意地でも何でもない。


−−あんたなんか嫌い


そう告げてやった時のクロードの悲痛な表情。

まさか強姦しておいて、好かれる要素が残っているとでも思っていたのか。

愛されたいなら、それらしく振る舞えばいいのに。それともファルナラの愛情が永遠に自分に向かないことに無意識に気付いているのか。


「私に従え。従うならば下ろしてやろう」


最後の最後にそう宣ったクロードに「気持ち悪い」とだけ返して、責め苦は終わりを告げた。

違う。終わってはいない。

クロードが手を動かすことを止めただけか。

クロードはファルナラの中に鎖を大量に残して去っていった。

レスカの能力で空間を移動できると知ったのはその時だ。


「−−今晩までに心を入れ換えておくのだな」


クロードは捨て台詞を残して去った。ファルナラの膣と直腸内にじわりと蠢く鎖を置いて。

それが動く度に鈍痛と激痛が交互にファルナラを苛む。

ファルナラが身動いでも地獄、動かずじっとしていても鎖自体が動いて地獄だった。

重い。苦しい。気持ち悪い。

レスカに体を起こされて衣服を着せられて。

嫌だったのに体は動かず、レスカのいいように服を着せられた。

見た目を気にして上は男物、下は女物と体のラインが出ないようにしていたのに、レスカに巫女装束を着せられた。

嫌だと口を動かすことも出来なかった。

そのままレスカに体を支えられて、兵舎で朝食を取ることになって。

今は、変わらず地獄だ。

兵達の困惑した様子が苛立つ。

嫌でも耳に入るファルナラへの内緒話がうざい。

ルトは向かいに座って無言のまま食事に手をつけて。

「ファルナラ様、せめて果物だけでもお召し上がり下さい」

感情を見せない口調で、隣に座ったレスカがファルナラの肩を叩く。

触るな。気持ち悪い。

そう言って払い除けたいのに、体は何も反応しない。

「本日は白神殿の調査になります。体力をつけて頂かなければ、後に響きますので」

白神殿の調査?

破滅の乙女の捜索はどうなったのだ。ファルナラはその為にここに来たというのに。

静かに顔を上げて、泣き張らした瞳をレスカに向ける。

声は出なかった。叫び続けたのだから仕方ない。

だがレスカは意思疏通能力で、触れた指先からファルナラの知りたいことを理解した様子だった。

「破滅の乙女については見送る事になりました。そもそも今回は術者や喪失師を使った際に乙女の捜索がどれほど楽になるのかを知りたかっただけですので、ファルナラ様が乙女と接触された時点で任務は終わっているのです」

「…」

恐らく声が普通に出ているとしても絶句した事だろう。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ