エル・フェアリア2

□第101話
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「血気盛んだな、少年。試合の興奮が続いているだけだろうから、気にすることはないぞ」

流暢なエル・フェアリア語のまま、武人が面白そうに笑い続ける。

「お前なぁ…」

変わってジャックは、呆れた様子で。

何だというのか。

困惑したルードヴィッヒも、次第に身体の異変に気付いてしまった。

股間が元気に張り詰めている。

気付いた瞬間にバッと目を向ければ、衣服越しからでもわかるほど昂ぶる様子に一気に血の気が引いた。

この状態、今、女性にまで見られていなかったか。

「うわあああああああ!!!!」

あまりの出来事にわけもわからないまま叫んで、ベッドに再び突っ伏する。

状況などいまだに飲み込めないというのに。

「さっきの奴はうちの癒術騎士のイヴだ。安心しろ。治癒魔術師として、そうなった原因はちゃんと理解しているさ」

何も恥ずかしがるなと言ってくれるその言葉の節々で笑い続けているではないか。

「な、何で…これ、私はいったい……」

女性に見られた恥ずかしさで一気に萎んでいくのを肌で感じてから、ルードヴィッヒは情けない声で現状の説明をジャックに求めた。

「…第三試合、覚えているか?」

問われて、数秒考えて。

「……あ!!」

思い出す。

ウインドとの試合を。

その試合の記憶は途中から消えている。

「お前はその試合でウインドと同時に気絶したんだ。そのせいで勝者は持ち越し、先に目覚めた方の勝利になるんだがな。…お前が先に目覚めたんだよ」

よかったな、と。

説明を受けてから改めて室内を見渡せば、ルードヴィッヒの隣のベッドに寝かされているウインドを見つけた。

ウインドは今も深い眠りの中で身体を癒すことを優先するように、眉間に深い皺が刻まれている。

「安心するのはまだ早いぞ。勝者は君になったが、次の試合に出られるかは、君次第だ」

「……え?」

ジャックに続く武人の説明に、また困惑した。

「剣術の第三試合も全て終わり、既に第四試合…準決勝戦が始まっている。武術の一戦目はスアタニラ国のトウヤ殿が勝ち上がった。…次は君とイリュエノッドのクイ殿の試合だが…間に合えば戦えるが?」

意味はいまだに理解できない。

だが身体が直感した。

「走るぞ!」

ジャックに言われて、すぐに反応する。

走り出すと同時に一瞬で全力疾走に持ち込んで、グラウンドへと急いだ。

先を走るジャックだったが、廊下を抜けて、日光の下に出た瞬間にルードヴィッヒの背中を強く叩いて「急げ!」とだけ告げて。

青空の下、がむしゃらに戦闘場へと走るルードヴィッヒに一気に歓声が降り注いだ。

同じグラウンド内にいる他国の者達からも、観客席にいる観戦者達からも。

そして戦闘場には、腕を組んだクイが一人、ルードヴィッヒが駆け寄るのを嬉しそうに眺めていた。

『ーー第三試合四戦目は大会規定により、先に目覚めたエル・フェアリア国ルードヴィッヒ殿の勝利となりました!続けてこれより、第四試合二戦目を開始いたします!!』

あと少しで戦闘場に到着するというところで花火が打ち上がり、観客席からさらに盛大な歓声が噴き上がる。

『待ってたぞ!!』

戦闘場へと辿り着けば、クイが満面の笑みを浮かべながらルードヴィッヒに手を差し出してくれた。

その手に捕まり、一気に戦闘場へと上がる。

『満身創痍だな。悪いがこの試合、俺が貰った』

『私は勝ちます!!』

クイはしっかり休んだかのように戦闘着も肌も綺麗で、変わってルードヴィッヒはボロボロのままで。

歓声が凄まじく湧き上がり続けて収まる気配が見えない中で、クイが「向こうを見ろ」と一点を指差して。

そこは、イリュエノッドの陣営だ。

そして、コウェルズが嬉しそうに笑っていて。

『トウヤもコウェルズ様も勝ち上がったぞ』

ボソリと教えてくれて、全身の痛みも疲れも一気に吹き飛んだ。

戦闘場には審判も上がってきて、彼も祝福するようにルードヴィッヒに笑いかけてくれて。

状況は今も把握しきれていない。

だが、把握する必要などない。

目の前にいるクイを倒す。

そのことだけに集中するようにルードヴィッヒは己の全神経を自身に集中させて、凄まじい歓声を全て遮断した。

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