青すぎる春
□始まりは屋上で
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やべぇ、ケータイ置いてきた
立ち入り禁止なんて看板立てんなら
鍵の一つもかけとけよ。
ひんやりと冷たいドアノブを回せば
重い扉がゆっくりと開いて
コンクリートの床と絵に描いたような
真っ青な空が目の前に広がった。
「…あった…」
ぽつんと取り残されていた
ケータイを拾いあげ
フェンス越しに校庭を眺める。
俺が学校で唯一落ち着ける場所がここ。
煩しい人間関係、口先だけの
大人とそれに従う生徒。
もううんざり。
だから午前の授業が終ると
この景色に会いに来るのが
俺の日課になってる。
ここにいる時だけだな
肩の力が抜けるのは。
解放感か虚脱感か、冷たい無機質の
床に呼ばれて身体を転がした。
嫌になるくらい晴れた空。
どこか皮肉っぽくて、
溜め息ひとつ。