岩上さんと矢口くん

□24時間年中無休(2)
1ページ/5ページ



俺の耳元で矢口くんが
囁いた言葉。

聞き間違いだったのかも
しれない。

コンビニのバイトと客
それ以上でもそれ以下でもない。

そんな相手に仕事以外で
会う意味なんか想像しえる
範囲では皆無。

それなのに俺は
深夜の公園の前で突っ立ってる。

「ミヤくん」って呼ばれてた
あの人を待っているためなのか。

いまいち自分でも
理解できていない。

でも、それしかないよな。

夢を見ているような、それでいて
何かに化かされているような
不思議な心持ち。

胸の鼓動がはやいのは
期待なのか不安なのか。

でもたぶん聞き間違い。

来るはずないって分かってる。

だって俺と矢口くんは他人。

矢口くんは俺の名前さえ
知らない。

お互い住んでいる場所も
どんな生活しているかも
どんな人間なのかも知らない。

俺ってばかだよね。

1%でも期待してた俺は
ばかだよね。

でも、片手に持ったレジ袋を見ると
あの時の矢口くんの言葉が
フラッシュバックする。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ