短編

□初雪
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街灯の灯る帰り道。
マフラーに顔をうめて歩く2人。


『……家につく前に死ぬかも』
「何言ってんだボケェ。オレだって死にそうだ」


私だ、いいや俺だとくだらない言い争いをしながら、乾いた風の吹く道を歩く。


『今年も冬が来たねぇ』
「…おう」
『雪、雪降らないかな』
「はぁ?」


子供じみた事をいう加奏に呆れたように声を漏らした。


『何さ。雪降ったら楽しいじゃんー』
「もっと寒くなるだろ」
『えー、いいじゃんー。楽しくなるよー?』


寒いのは嫌だ、と影山が加奏の頬に素手で触れる。


『つんめた!何その手!影山生きてる?』
「生きてるぞ」


キャッキャとはしゃいでいる2人の上に広がる空から、霜が舞い降りてきた。
その霜が、赤く染まった加奏の頬に降りて、溶ける。


『あっ』
「降ってきたみたいだな」


2人は揃って空を見上げた。
しんしんと降り続く雪に見惚れていると、不意にくしゃみが出た。


「へっぷし!…あー、やっぱり寒い」
『風邪ひかないでよ?』
「あぁ……ずずっ」
『さて、初雪も見れたことだし、早く帰ろう!』


冷えきった影山の手をとり、パタパタと走っていく。


「お、おい」
『私も寒いから早く帰るのー!』
「…ったく」


手をひかれ、どこか嬉しそうな表情をする影山。
雪の降り続ける住宅街を、2人が駆け抜けていく。


『じゃーね、また明日』
「ん、じゃあな」


手を振り、加奏が家に入ったのを確認してから、再び歩き出す影山。


「…雪も、悪くないな」


先ほどまでひかれていた手を見つめ、小さく呟いた。


お題『確かに恋だった』様より

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