青春
□1話
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部活が終わり、部室のドアノブに手をかけたときだった。
中から先輩たちの声が聞こえた。
「小宮ってさ、そこまで上手くもないのに2、3年差しおいてレギュラーとかありえないよね。」
「監督のお気に入りとかじゃない?だってそうじゃないとレギュラーになんてなれないでしょ!」
「最悪ー」
いつ部室に入っていいかわからず扉の前で立ち尽くしてしまった。
先輩たちは私がここにいること知ってるのかな。
きっと知ってたとしても先輩たちは私の聞こえるところで……
「中入んないの?」
後ろから聞き覚えのある少しだるそうな声がした。
同じクラスの国見くんだった。
国見くんとは隣の席に席替えでなったばかりだからたまに話す。
といっても、国見くんは授業中は寝てるか外を眺めてるだけだから話すのは本当にたまにだけだし、目があうと目をいつもそらされるけど。
なんて言っていいかわからず、下を向いて黙ってしまう。
「あんな奴らほっとけよ。」
国見くんが部室の扉のほうをみた。
あ、見られてたんだ。
「でも、私嫌われてるし……あとで先輩が帰ったら部室入るよ。」
私に立ち向かう勇気なんてない。
私がちょっと我慢してそれでみんなが幸せになれるならそれでいい。
「小宮のほうが上手いからレギュラーなんだろ?堂々としてればいいじゃん。」
国見くん私がレギュラーなこととか部活で悩んでることとか気がついてたんだ。
いつもなんだか素っ気ないかんじだし、なんだか意外。
「なんで笑ってんの?」
国見くんがため息をつく。
「なんか、嬉しくって。ありがとう。私、頑張るね。」
私は軽く国見くんに礼をして部室に入った。
誰かに自分の気持ちわかってもらえるのってやっぱり嬉しいんだね。
先輩たちの視線を感じた。
でも、いつものように怖くなかった。
私は堂々としていた。
いつのまにかその視線も感じなくなっていた。