祝☆1000HIT

□Believe me
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どうやって船に帰ったのか、今が何時なのか、傍に転がってる空き瓶はなんだったか、何もかもが曖昧なままおれは自室のソファに横になっていた
いや、横になっていたというのは語弊がある、どれが的確といえば倒れこんでいるだろう
片足がソファからずり落ち、服だって寝乱れてくたびれて、何より頭が痛くて身体が重い、とにかくだるくて吐き気が酷い
重い瞼を無理やり抉じ開けて辺りを見ればやはり空き瓶が目に付く
一つ一つに目を向ければ船員からのプレゼントで貰ったものだったり、気になって試し買いしてみたものだったり、他の海賊から奪った戦利品だったり、上陸期間最終日にリオと飲もうと思っていた秘蔵のものだったり…




…リオ?



そう、そうだ、アイツは、あの女、一緒にいて、笑ってた、手を繋いでた


「…ふ、はは…っは」


あまりにも似合いすぎるその姿が頭に浮かんで無意識に口元が歪み声が漏れた
男のおれとじゃ絶対に出来ない
それが女なら出来る

堂々と街中で手を繋ぐことも、腕を絡めることも、寄り添って歩くことも…なんだって出来る

おれは何で男なんだ、男じゃなかったら出会えなかったかもしれない、だとしても…望んでしまうんだ

おれは、リオを愛してるから

男だから抱くのに適してないし、柔らかな胸もない、嬌声だって女のように艶かしいものじゃない
それでもリオは何度もおれを求めてきた、筋肉に飾りが付いただけの硬い胸に何度も触れてきた、声が聞きたいと口を塞ぐ手を優しく絡め取られた

そういえばアイツはいつもおれの指がきれいだと言っていた、その指が好きだと何度も口付けてきた
重りでも付いているんじゃないかと錯覚するほどに重い腕を持ち上げ目の前に手をかざす
なんて事はないただの男の手、刀を使うから所々タコがあるし節だってある
こんな手の何が良かったのか、言われたときも今も甚だ疑問だ

いや、もう考える必要はない

アイツはおれじゃなくあの女を選んだんだ

もう船にも帰ってこないかもしれない…いいや、アイツはまじめで義理堅い男だ
おれへの別れの言葉を言いに、船員への手土産と報告をしに来るに決まってる

どうしてやろう、アイツが来たら…

デイ頭手足を切り落として、監禁して、おれ以外の世界を遮断して、あの女を忘れた頃におれへの愛を植えつけてやろうか

いやだめだ、そんなことをしたらリオを傷つけることになる
それに女の方がリオを忘れられずに追いかけてくるかもしれない

女を連れてきたら能力無しで刻んでやろうか
勿論、刻むのは女だけだ
リオのこともそうしてやりたいがあの世なんてものがあってそこで未来永劫一緒に居るかと思うと吐き気がする
女を殺せばおれは確実に怨まれるだろう、その場で殺しにかかってくるかもしれない
それでもいい、それがいい、またおれを見るならそっちの方がいい

愛しさを込めた瞳も、声も、指先も、心も、全て怨みや殺意に変えて…

想像するだけで体が竦むが、おれを見ずにいるリオを一瞬でも見ないですむならそっちの方がいい



「っく…ぅ、ふ」



いやだ


おれを見ないリオ

おれを怨むだろうリオ



うそだ、そんなリオはいやだ

だっておれは今まで愛されてきたんだ

優しくされた

大切にされた



おれだって愛してた、今だって

優しくしたい

大切にしたい



「ぃ、や…だ」



いやだいやだいやだいやだいやだいやだ
そんなの耐えられない
どうしたらいい、どうすればリオはおれのことを愛してくれる?



「ひっ、く…ぅ、うぅ、リオ…」




すきだ、あいしてるんだ

だからすてないで、あいして

おれはずっとあいしてるから

またあしたもおれにあいしてるといってくちづけて



リオ、なぁ、早く涙を拭ってくれよ
いつもみたいに優しく触れて『どうしたんだ、ロー』と優しく愛しさを込めて名前を呼んで
抱きしめておれが眠るまで傍に居て
目が覚めたら隣にいておはようと共にまた口付けて




「リオ、すき、あいしてる」




素直な気持ちを言葉にすれば大粒の涙が目尻から零れソファにいくつもシミを作っていく
ダルさも吐き気も増して、今度は痛む頭が熱を持つ
こんな時、リオが居てくれたら優しく頭を撫でてあやしてくれる

その手も声も温度もない今、おれに縋る事が出来るのは今朝リオが置いていったシャツ一枚だけだった



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