ハロウィン企画2015

□意地悪悪魔の優しい悪戯
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着せ替え人形よろしくああでもないこうでもないとベビー5に散々弄くり倒された俺は疲弊した重い足取りでコラソンの部屋へ向かった


『引かれねぇかな、この格好』


ベビー5もバッファローも似合うといってくれたし、ドフィも「おれが見立てたんだから当然だ」と鼻高々だったし、あんなに激怒してたグラディウスも「流石は若だ、腹立つくらい似合うぞ」ってメットパンク(この場合被ってたのかぼちゃだからパンプキンパンク?)されたし他のヤツからも賛辞を貰った

けどなぁ…


『あ』


着いちまった…まぁ、成るように成れ、か


『これで別れることになったら…俺の顔面クオリティを怨むか』


一応ドフィと幹部公認の恋人関係にあるコラソンと俺は交際期間がまだ長くない
一目惚れ同士だからいまだ勢いは死んでない、だとしてもこれはいきなりハードル高すぎやしないかドフィ?
いやいや、別にドフィのセンスを愚弄してるわけじゃない、ただ…いやこれ以上考えるのはよそう
まっさかドフィ怨むわけに行かないその時点で確実に死が待つだけだ


『コラソン、入るぞ』


諦め全開にいつもの調子でドアをノック、どうせまだ寝てるだろうコラソンからの入室許可は必要ない
俺は意を決して部屋に踏み込んだ


「っ!!??」

『何で起きてるんだよこんなときまでドジッ子スキル発動すんな…』


せめて揺り起こすまでに本当の決心を決めようとしてたのに…このドジッ子が
口をパクパクさせるコラソンをげんなりと睨んでやれば弾かれたように紙とペンを引っつかみ殴り書いて見せてきた


【なんだそのカッコ!?】

『なんだっけ、あれ、今日祭りの日らしいからその格好』


興味のないことは簡単に頭からポロリする俺だ、こんな下らないイベントの名前とか忘れたわ
祭りの意味がわからないのだろうコラソンは首を傾げていた
それを手助けするため一番印象の強いものを口にする


『さっきグラディウスがジャック・オ・ランタンの仮装してたな』

【なんだハロウィンか】

『お前は知ってたのか』

【そういうおまえはしらないのか】

『あぁ、結局聞きそびれたんだがそのハロウィンってのは何をする祭りなんだ?』


近くの椅子に腰掛けながら問えば自慢げに鼻息立てたコラソンが紙に文を書き始めた
その文は長くなることはなく完結的な説明が書かれていた


『へぇ、なんか変なイベントだな』

【へんか?】

『だってこれ結局は恐喝だろ、お菓子か悪戯かなんて純真無垢なガキに二者択一精神植えつけるとか恐ろしすぎる』

【ちがう!!わいきょくするな!!】

『?』

「【だからこのイベントは】〜〜〜っ!!」

『どうしたコラソン』


書き進める途中で文章をぐしゃぐしゃにしたコラソンは声無く唸りひとつ指を鳴らした


「"サイレント"」

『書くのが面倒になったか?』


他の誰も知らないコラソンの声を俺は知っていた
コラソンが現大将センゴクのもとより送り込まれたスパイであることも
恋人になる直前聞かされたときはたまげたものだった
その秘密を知ったその瞬間から俺は俺の意思に関係なく否応無しに裏切り者なのだから
自分の命が危ぶまれているにも拘らず、寧ろ『そんなこと』と瑣末なものにできてしまうのはそれほどまでにこの男を愛してしまっていたからだ
この声をあと何度聞くことが出来るのかと遠く思い馳せているとノーメイクのコラソンの顔が座ってた椅子ごと寄って来た


「こんなまどろっこしい説明はあとだ!!なんだよその格好は!?」

『何って…悪魔?』

「そうじゃねぇええぇぇ!!!!」


あー、うるっさいなぁ…
普段が筆談だから声聞けて新鮮だし嬉しいけどこういった叫びやシャウト紛いの咆哮はノーサンキュー
近すぎる顔を優しく押し退けて肩を叩く、すると少し落ち着いてもう一度なんで悪魔なんだと聞いてきた


『なんでって我等がボスお前の兄上ドンキホーテ・ドフラミンゴ様が輝きすぎたセンスで選んだからだよ』

「ドッフィィイイィ!!!!」

『うっさいって』


いちいち叫ばれたら溜まったもんじゃない、落ち着けと頭をなでれば顔を真っ赤にして黙る
あー俺の恋人可愛いわー、あとチョロい


「くそ、ドフィのヤツ…っ」

『おい、そんな似合わないのか?』

「いやすげぇ似合ってる似合いすぎカッコ良すぎてヤバイドフィグッジョブ!でもなんで悪魔!?」

『え、あー…多々つっ込みたいがとりあえずお褒めの言葉をありがとう?』


そんな親の敵に出会ったみたいな顔して褒められたら微妙だがコラソンは嘘をつくのが大の苦手だ、ドジッ子だしな
なんでこの重要任務はドジらないのかと常々思う


「…それ」

『ん?』

「その仮装、誰に見せた?」

『ベビー5とバッファロー、ドフィ、グラディウス…あとはここに来るまでに擦れ違ったその他大勢』

「…」

『何でブスくれてんだ?』


さっきから不機嫌になってばっかしだな
多分俺が悪いんだろうけど一体何が悪かったのかがわからない
別に仮装見られたからってお前に嫌われること以外眼中に入ってないから全くわからない


「ずりぃ」

『は?』

「…そんなカッコ良い姿、他のヤツがおれより先に見たんだろ?ずりぃ」

『あぁなんだ、嫉妬したのか』

「悪いかうるせぇ!!」

『さっきからうっさいのお前の方だから』


いかり肩になるコラソンをこれ以上激昂させるのは避けたい
ただでさえ常日頃から神経すり減らしてるんだ、俺と居る時くらいはリラックスさせてやりたい
俺は椅子から立ち上がりコラソンの前に跪くと下からその不機嫌顔を両手で優しく包む


「っジープ?」

『落ち着けよ、とりあえずおはよう』

「ん…っ」


宥めるついでに日課であるおはようのキスを済ませた
そして熱を強めて赤くなった目元を親指の腹で撫でてやると視線が反らされる
これでしばらくは静かだな、本当に俺の恋人可愛い、そんでやっぱりチョロい
心の中ではほくそ笑んで、表の顔で愛しさ全開に微笑んだ


『なぁ、目ぇ反らすなよ、ちゃんと俺を見て』

「む、り…近い、顔近い」

『見てくんなきゃ離れてやらない』

「う…」


チラチラとこっちを見るものの視線自体はかち合わない、初心だなぁ…
少しだけ顔を離してやるとようやく俺の顔に視線が固定された


「みた、けど…なんだよ」

『本当に似合うか、この格好』

「っさ、さっきもそう言ったろ!?」

『いや言葉と表情が全く一致してなかったから素直に褒められてる気がしなくて…そうか、似合うか』


あー…ホッとした…
まさかこんな服装ひとつで好感度下がったら嫌だろ、そしたらマジでドフィに反旗を翻していたかもしれない
悲しみと絶望に暮れた人間は自暴自棄とその場の勢いで何でも出来ちゃうからおっかないよなホント
ほら、どっかのお偉い一族からわざわざ転落人生送りにうっかり降りてきちゃったお家のお兄ちゃんとか…誰なんて言わなくてもわかるだろ?





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