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□愛があれば大丈夫
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『なんじゃこりゃ』





えー、状況を確認しよう

俺はローが呼んでるっつーから粥届けるついでに顔を出そうと医務室にきた

で、目の前には熱で床に臥せるローが居る

で、シャチ含め3名がベッドの周りでアタフタしながらローを囲んでる




…うん、字面だけなら至って普っ通の事なんだが





『今からオペでも始まんのかオイ』

「あ゛!!ジープお前おっせーよこの馬鹿!!」

『へーへー悪かったなこのクソ馬鹿、で、何してんだ仰々しい。オペの準備か?』




船員全員が医療従事者であるハートに対し、俺はただのコック(修行中)

見た事もない医療器具の数々に少しばかりローの風邪への不安感が膨らむ


が、聞かされたのはなんともクソアホらしい答え




「違ぇよ、船長が…」

『あんだよ、ペンギンも詳しく教えてくれなかったぜ?』

「あー、その…」

『あの反応飽きた、さっさと言え』





「…………ジープ、か?」





…んん?

なんか聞き慣れてるようなそうでないような声が…



「あ、船長、ジープ来ましたよ。じゃ、後は頼む健闘もついでに祈ってる!!」

『は?』



"なんだって?"と詳しい説明を求める間もなく目の前には分厚く重量感満載の本が迫る

反射的に本をキャッチするとほぼ同時に扉の閉まる音

唖然と扉を見つめてから手元の本に目を落とす





『…いい度胸だ、口減らしに協力させてやる、泣いて喜びやがれクソ野郎共』




決めた、今日から次の島に着くまでの4日間、あいつ等は飯抜きだ

不寝番の時の夜食と夜明けのコーヒーも出してやらん、絶対だ



恨みの視線を落とす先には一冊の本

先ほど投げられたばかりの分厚く重量感のあるそれだ

タイトルは"誰でもわかる看病マニュアル~風邪編~"


つまりはあれだ、中途半端になってる仕込もさせず、更には食料の在庫チェックも何もしてねぇこの状況の俺(コック)に看病しろってか?



「…けほっ、ジープ」

『顔真っ赤だな、どうした?何か用なんだろ?』



掠れた声で呼ばれて我に返る

遠目からしか見ていなかったから気がつかなかったが、かなり高熱らしく顔が真っ赤だ

病状を軽視していた自分を恨みながらも優しく声を掛けた




「けほっ…いき、苦し、い」

『あー…鼻詰まってんなこりゃ』





聞き覚えがあるようでないような声になった原因はコレか

頭を撫でて少し待つように促しマニュアルを開くと中からメモがひらりと落ちる


きったねぇ字、シャチだな




"船長が鼻かんでくれねぇから何とかしてくれ"




…あのなぁ、ローはもうガキじゃねぇ24の大人なんだぜ?

船長だからって今は立派に病人だぜ?

何でそこまで遠慮するかなこの船の連中は…




『とりあえず鼻かめ、少しかマシになんだろ』



ホレ、とティッシュで鼻を覆ってやるがローは唸るだけでちっとも鼻をかもうとしない




『ロー、おいって』

「っみみ、けほけほっい、いたい」

『…耳?』




…あー、はいはい、耳な

つまりは鼻詰まり過ぎて耳抜き出来ねぇわけか

あるよな、鼻かんだり詰まったりした時に耳痛くなることあるわ、うん

だが、呼吸を楽にするにはコレしかねぇし、かと言ってローがこの状態じゃ何を言っても素直にやってくれるとも思えねぇ


はてさて、どうしたモンか…

ぱらぱらとマニュアルをめくる、何か手があるんじゃねぇかと思うから



あ?他に方法があるならシャチ達がとっくにやってるだろうって?

わかってんだよンな事

ただな、あいつらだって全ての医療知識、しかも初歩である風邪の治療知識が全部頭に入ってるかといえばそうじゃないと思うんだ

俺も時々レシピ読み返して"あー、そーいやこんな調理法もあったな"って新発見したりするからな



………お、コレいけんじゃねぇか?

ローが完治した後でキレる事請け合いの方法だが…まぁ、仕方がない

今のところ、ローとの口喧嘩の勝率は五分(俺が反則技を使用してギリ)だ、説き伏せられるかも知れん



…よし、覚悟は決まった、やろう





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