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□おめでとうとプレゼント
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ローは目を覚まし、隣にジープがいない事に気づいて声を掛けた


「…ジープ?」

『おはよう、コーヒー飲むか?』

「…いる」



身体を起こせば、案外近くにいた



『熱いからな』

「ん」



ロー専用のマグを受け取り一口飲む

ジープの言うと織り厚いそれは頭をすっきりと覚ましてくれる



『起きたな』

「さっきから起きてる」

『そうだな…ロー』

「ん?」



ジープはローの手からマグカップを奪い取り、近くのテーブルに置く

訳がわからないローがジープを見上げると、優しい瞳と目が合った



『誕生日おめでとう、ロー』



優しく抱きしめる逞しい腕



『生まれてきてくれた事、この年まで生きてくれた事、俺と出会ってくれた事…全てに感謝してる』



優しく紡がれるその言葉




『ありがとう、ロー』




身体が離れるとニット帽を取り払ったジープの顔

昨夜も見たはずのその顔が、今はまるで別な物に見えた




『おめでとう』




「…ありがと、な」

『あぁ、でもその言葉はプレゼントの後に聞きてぇな』

「!?…これは」



差し出されたプレゼントは一冊の医学書

ローがずっと探し求めていた過去の難病症例が載る初版本




「どうやって…」

『島に着くたびに本屋を探しまくったんだ』

「おれだって探してたが…見逃したのか?」

『いや、そうじゃねぇ。ローは普通の本屋を探してたが、俺はくたびれたり潰れかけの本屋を探してた、そしたらそいつを見つけた』

「…盲点だった」

『で、喜んでくれたか?』



本に釘付けになったローの顔を覗き込むジープは少しの不安を滲ませている

ローはパッと顔を上げてありがとうと告げた



『よかった。だが、それを読むのは朝食後にしてくれないか?』

「いつ読んだっていいだろうが」

『読み始めると止まらない、飯を食わないし風呂も入らない、それに…』

「?」

『俺に構ってくれなくなる』

「っば、かやろ!!何言ってんだ!!」



“本当の事だろうが”と言いながらジープは朝食を持ってくるためキッチンへいくと告げて部屋を出て行った



「…は、アイツといると寿命が縮む」



どくどくと脈打つ心臓を押さえた



その時、手に違和感を覚えた



「…あの、ばかっ!!」







――――――――







『コック、軽食2人分頼む』

「おう」

「ジープ、オッス」

『おはようシャチ』



寝癖の酷い頭で登場したシャチに軽く挨拶を返し、朝食が出来るまでカウンターに座る事に

シャチもコックに朝食を頼みジープの隣りに座った



「そうだ、今日は船長を部屋から出すなよ!」

『わかってる』



もうすでにバレている事に気付いているジープにとってどうでもいいことなので軽くいなし、出来上がった軽食を持って船長室へ戻る









今頃、ローが部屋でどんな反応をしているのかを想像しながら進む足取りは、とても軽やかだった







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