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□おめでとうとプレゼント
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夜、幾分か気持ちがすっきりしたジープはローの部屋へ向かっていた

手土産に前回立ち寄った島で買った酒と少しのつまみを手にし、これから何を話そうかと考える

ローの部屋に着きノックをした



『船長、ジープです』

「…入れ」

『失礼します』



ドアを開ければ膨大な書物とローの背中が視界に入る

にやけそうになる口元に力を入れながらローに近づいていく



『この間物資調達で立ち寄った島で良い酒手に入れた、一緒にどうだ?』

「…」

『ロー?』



なにやら不機嫌な様子のロー

部屋に入れておきながらこの態度はどういうことだろうか

訳がわからないまま酒とつまみをテーブルに置き、背を向けたままのローの前に回ってみる



「…」

『どうした?』



やはりローは不機嫌な顔をしていた

不思議に思いながらローの頬に手を添えてみると叩き落され、顔を背けられてしまった



『…俺、何かしたか?』

「さっき、ペンギンと部屋で何をしてた」

『少し話してタバコ吸ってただけだ』

「…」



訳を話すわけにはいかないので嘘を吐かず、しかしいらない言葉を言わないように気をつけた

しかし、ローの顔はムスッとしたまま

怒っているというよりも、拗ねている


それをなんとなく察したジープはもう1度頬に手を伸ばして、目尻を親指の腹で優しく撫でる



今度は、叩き落される事はなかった



『ロー?』

「…何の話をしてた」



一瞬、言葉に詰まりそうになった

しかし、ポーカーフェイスはお手の物、表情と態度を隠すエキスパートのジープはすらりと言葉を紡いだ



『もうとっくに気付いてるだろうが、明日はローの誕生日だ』

「アレだけあからさまなんだ、気付かないと思ってるアイツ等の方がおかしい」

『まぁ、な…それで、誕生日はどう演出しようかとか、夜はどうするとか、そんな話だ』



相談終了後にそういった話をしたのは事実、嘘は吐いていない

そう自分に言い訳しながら徐々に機嫌を直していくローへの罪悪感をなかった事にし、頬に当てていた手を頭へずらして髪を解くように撫でた

見る見るうちに機嫌を直したローはジープの首へ腕を伸ばし、抱き寄せた



「…あまり、他のヤツと2人きりになるな」

『極力そうする』

「そうしろ」



ジープが抱きしめ返せばポツリと聞こえるローの声は弱弱しい

もともと我が儘だらけなローがこうもしおらしい姿を見せる事はない



―――ジープの前以外では、絶対に見せない



「酒…」

『ん、あぁ、北の酒だ。辛めだから好きかと思って』



身体を開放しテーブルの上の酒とつまみを見やった

つまみもローの好みに合わせたもの

それに気付いたローはトクリと跳ねた心臓に、くすぐったさを覚えた




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