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□おめでとうとプレゼント
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『で、コイツをどう渡したら良いかわからねぇ』

「…お前、意外と初心だな」

『うるせぇ』



胸の内を全て曝け出した事とペンギンの一言により大ダメージを負ってしまったジープは深く項垂れた

悪態にも力はない



「そもそも何でそこまで悩むんだ」

『ローに喜んでもらいてぇから』

「うわ」

『何だ』

「何でプレゼント渡すの恥ずかしがるのにそういうことをさらっと言えるんだお前」

『? 何か恥ずかしがる要素あったか?』

「…いや、もういい、何でもない」



ペンギンは先程のジープと同じくらい項垂れ始めた

聞き役がこうなっては元も子もないと思いすぐさま立て直しはしたものの、ダメージは大きい



『…本当に初めてなんだ』



ジープはポツリポツリと話し始めた



『こんなに誰かの事で頭がパンクしそうになるのも、姿を見るだけで、声を聞くだけで、名前を聞くだけで、こんな落ち着かない気持ちになるなんて…』



心臓の上に手を当てて目を閉じる

精一杯、今の気持ちをかみ締める

口元は薄っすらと弧を描く



総じてそれは、幸福な表情




ペンギンは驚いた


ジープのこんな表情は、見た事がなかったから


ペンギン同様顔の半分を覆い隠すニット帽で表情は読みにくく、もともと感情の起伏も少ない

口数も少ないし基本無関心

口を開けば毒を吐き、周囲から距離をとる



それらは全て、ジープの不器用な性格故



仲間たちはそれを理解している



それに、ジープの言葉には嘘がない



いつも真っ直ぐ、その相手に向かっていく



仲間たちは、ジープのそういったところがとても気に入っているし、放っておけない



「本当に、好きなんだな」

『あぁ…すげぇ好きだ』

「そうか」



ペンギンは胸が温かくなるのを感じ、同じように口元を綻ばせた



「よし、おれが一肌脱いでやる」

『…何する気だ』

「そう警戒するな、練習相手になってやるだけだ」

『練習?』



ジープは首を傾げる



「恥ずかしくて渡せないなら恥ずかしくならないように練習すれば良い、おれが練習代になってやるから…」

『断る』

「………えぇ!?」

『相談した手前悪いが、俺はこういうもんは努力が必要でも練習がどうとかじゃねぇと思う』

「いやまぁ、そうだけど…」

『だから、何とか自分なりのやり方でやってみたい』

「…」



互いに隠れた目を見つめ合う



数秒、10秒たつかたたないか



目を反らしたのはペンギンの方だった




「ったく、ジープは頑固だな」

『うるせぇ放って置け』



ジープはタバコを取り出して火を点ける

ペンギンはそれを奪い取って吸い込んだ

紫煙を吐き出して、にやりと笑う



「放って置いて欲しけりゃ、頑張れよ」

『人のタバコ奪っといてドヤ顔すんな』

「いって!」



ペンギンの帽子を掻い潜り、ジープの長い指で額が弾かれた



「お前のデコピン痛いんだぞ!!」

『痛くなかったら意味がねぇ』

「このドS!!」

『なんとでも』

「あーもー…マジで痛い」

『…なぁ』

「ん?…んむっ」



ジープは未だに額をさするペンギンの口にタバコを押し込み、火を点けた



『ありがとな』

「!…仲間だからな」



2人は小さく笑いあい、肺を汚し合った





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