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□好きなところ
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Q.恋人の好きなところを教えてください
『はあ?』
「そんなに全力で呆れないでくんない!?」
いやいや、脈絡無くそんなこと言われたら誰だってこんな感じに返すだろ
『何だよ急に』
「いやぁ…なんつーかその…ペンギーン!!」
『オイ、マジで何だ』
何を企んでいやがるこのグラサン
シャチを睨むように見つめていると呼ばれて飛び出てはいないがペンギンが現れた
タイミングが良過ぎる
間違いなくペンギンもグルだ
ハートの海賊団内で縁の下の力持ちでかくも愛しき恋人の次くらいに頭の回転が速いブレイン的な位置にいるコイツを引き込まれては俺に成す術はないも同然
シャチの癖に無い頭振り絞って他力本願丸出しな手段を講じてきやがった
『シャチの癖にグラサン割れろ』
「声に出てるからなっ!?割ろうとしないでその怒り狂った拳下ろしてお願い!!」
「シャチ、虎穴にいらずんば虎児を得ずだ」
『ペンギン言い事言った』
「いやいやいや!!ペンギンさん駄目だろ今おれに対して良いこと言わなきゃ駄目でしょ!?何でそこでジープの味方しちゃうの!?おれの味方になるのはいつ!?」
『「永遠に来ない」』
「いーまーでーしょおおおぉぉおぉ!!??」
「テンポが悪い」
『突っ込み激しい』
「というかただ叫んでるだけ」
『しかも若干劣化してるネタだから微妙』
『「総評・シャチが駄目」』
「おれに対する芸人評価聞いてるわけじゃないんですけど!?」
………何の話してたんだっけか?
『シャチのせいで話が脱線二次災害発生、俺悪くない』
「人のせいにするの良くないと思う!」
「8割方シャチが悪いということで手を打ってくれないか?」
「ペンギンさん!?」
『………ペンギンが言うなら仕方が無い』
「納得いかねぇぇぇええぇ!!!!」
あーもー…うざい
コレって素直に冒頭の質問に答えてあげるべき?
それとも無視しまくって有耶無耶にしてシャチに然るべきお仕置きという名の罰を処するべき?
本音をぶっちゃければ後者を選びたい
(…………けどなぁ)
きゃんきゃん喚き続けているシャチのサングラスを覗いてみればコッソリ隠れている恋人のローを発見
あっちは気付いてないみたいだけど、鏡よろしくサングラスの反射で映ってる
まさか首謀者が自分の恋人とは…遣る瀬無いなぁオイ
つーか人選の間違いに気付いてくれよ
何でペンギンじゃなくてシャチ?
俺より頭悪いシャチになんで頼んじゃったの?
その辺にいたとか?
それともペンギンに言葉巧みに有耶無耶にされた?
もしくは「自分で聞いてください」的にご丁寧に断られた?
(どれにしたってもう少し人選は慎重にするべきだと思う)
呆れて溜め息をつくとシャチのサングラスに移るローがびくりと肩を震わせた
この反応はお付き合いが始まった当初より前からのものだと人伝いに聞いた
なんでもおれのため息は重く且つ威圧的なのだそうだ
(まっさかコレだけのことで俺に嫌われたとか呆れられたとかネガティブ思考まっしぐらになるとか…ねぇ?)
どんだけ俺のことが好きなの?
あぁ、うん、それだけ好きなんだよね
知ってる知ってる
で、そのネガティブ思考を放って置くととんでもない事態が起こることも重々承知してる
いつだったかな、真夜中にいきなり俺の部屋にシャンブルズで現れて上半身と下半身ぶった切られて…?
あぁ、そうだ、更に両腕も切られたんだ
で、とどめと言わんばかりに首まで切り落とされて一晩中呪詛みたいな愛の言葉をローの腕の中で延々と聞くことになったんだった
愛って怖いなガクブルだわ
『怖すぎて足が勝手にぃ〜』
「あっあっ!痛い!何で踵で執拗に眉間をぐりぐりするの痛い!!」
『喘ぐな気持ち悪い』
「ぁあ、えいで、なぃっ!」
『それを喘ぐって言うんだよシャチ、勉強になったな。メモ帳に1万回書いとけ』
「手がもげるから無理!!いぁ!」
それでも「100回で許して!」とか涙目で訴えてくるシャチってマジドMキモイ
「…そろそろ本当に答えてくれないか、船長が不憫だ(ボソ)」
あー、やっぱ何だかんだで絆されたのかペンペン
本当にうちの船員はローに甘い
俺も勿論そのうちの一人なワケですが
(しゃーねぇか…ローの顔色がとんでもないことになってきてるし、それ以前に目がヤバイ流石死の外科医狂気的過ぎてぞくぞくする)
余談だがさっきまでの小動物的ローには加虐心と庇護欲が交差して別の意味でぞくぞくしてた
え?変態?
違うよ、俺は変態じゃなくて性癖が異常なだけだよ
「尚悪いわ!!」
『ん?俺どこから声に出してた?』
「小動物云々のあたりからボリュームアップしてたな」
えーやだー、恥ずかしいー
まぁ本当のことだし船員もみんな知ってるしローもそれを承知で恋人関係にあるわけですが
「船長に聞こえて無くてよかったな」
『ホントにな』
「そんなことはどーでもいいから!早く答えてくれよ!!」
『んー…全部って答えは特に無いって事だし…でもだからってどこって言われるとなぁ』
「え"!?」
「おいおい、本当に無いのか?」
『いや、あるにはあるけど』
「じゃあ早くそれ言って!!船長の目が怖い!死の外科医すら超えて死の神にすら見える!!」
普通に死神って言えよ、といってやりたかったけどその前にシャチの命は本当に死神に狩られてしまうかもしれない
だって遠く背後にいるローの様子を本人に知られずに伺うためにはシャチのサングラスが必須なわけで、それにはシャチの目を除くようにサングラスを見つめなきゃならないわけで…
まぁ、何も事情を知らないやつには俺がシャチの目を熱烈に見つめてるようにしか見えないだろう
ローの嫉妬癖もなかなか過激だからなぁ
あ、ヤバイ、思い出しちゃいけない何かを思い出しそう
やめとこ、と頭を軽く振ってその何かを押し込めて別のことを考える
ローの好きなところ、ねぇ…
『うーーーーーーーん…』
「おい、流石に悩みすぎだ。それじゃあ本当に船長の好きなところが無いみたいだぞ」
『いや、だからあるんだって』
「本当に早くしてくださいお願いしますおれ本当に殺される眼力だけで殺される穴が空いちゃうホントに早くしてマジで急いでおれの命がなくなる前に!!」
あはは、ガタガタ震えて両手がお祈りのポーズになってて面白い
じゃなくて、いや、本当にそうじゃない
『あー、だからさぁ、ありすぎて出てこないんだよ、逆に』
「「はあ?」」
『あぁ、うん。シャチの気持ちは微塵もわからないけどこれは腹立つなシャチ重りつけて海に還る準備してやるから沈めよ』
「簡潔に死ねって言われた方がマシなんだけど何で遠回しでそんなに心に突き刺さる言葉がいえるわけ!?」
『え、だって、俺だぜ?』
「「あぁ、なるほど」」
あれ、なんか納得いかない
うわ、シャチと同じ気持ち体験しちゃった最あk『う゛おっふぁ!!』
いだだだだ、イタイイタイ
背骨が痛い、物凄い痛い
『ロー、俺の背骨折る気か』
「ぅー…ジープ…っ」
『今度は苦しい内臓的な物とさっき食った卵サンドが原形留めてない感じで出てくる後者は確実に出るから一端離れてくれ』
「…ぃや、だ」
嫌だじゃ無いからマジで出るコレ
よし、実力行使だ
「っあ…!」
『ったく、苦しいって言ってんだろ。ほれ、行くぞ』
引っぺがした瞬間泣きそうな顔をしたローに欲情しました
そんなに知りたきゃベッドの中で啼くほど言ってやるわ
A.言葉に出来ないくらい愛してます
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