本棚

□愛があれば大丈夫
1ページ/4ページ

*夢主はハートのコックさん






『…え?誰がなんだって?』



煮え滾る鍋の近くに居たために、カウンターの向こうに居るペンギンの声を聞き取れず聞き返す



「だから、船長が、風邪引いたんだよ」

『…オイオイ』



お聞きの通り、我等がハートの海賊団の船長様兼恋人のローが風邪をひいたらしい

全く、医者が床に臥せってどうすんだ、アホめ


つーか、俺は散々言ったんだぞ?

"風呂から上がったらキチンと頭拭いて乾かせ"とか

"机じゃなくて布団で寝ろ"とか

"布団は肩まで掛けろ、せめて腹に掛けて寝ろ"とか…etc



自分でもオカンかと思いながらも色々注意したんだぞ?



だがまぁ、そこは俺様何様船長様だ



「おれに命令するな」



の一言で一蹴されちまったよ




『何をやってんだ…』

「そう言うなよ。で、仕込み途中に悪いが粥か何か作ってくれ」

『アイアイ、ペンギン』



粥か…アイツ、梅干嫌いだしなぁ

鮭は昨夜出し切っちまったし、卵粥…あんまり熱上がると吐く事もあるんだよなぁ

しかも味濃くしないとミネラル足りん

確か昨夜顔出したとき酒飲んでたし、そのまま寝たなら確実に水分不足だ


(何かなかったか、ミネラル豊富な食材…)



…………あ、あったな、そーいや



『わかった、食料庫に行ってくる、出来たら持ってくからそっちは頼む。医務室か?』

「あぁ、任された。そっちも頼んだぞ」

『アイアイ』


俺は少し早足で食料庫に向かい、ペンギンも医務室を目指して歩き出した








――――――――









『よし、もう少しだ』



悩んだ末、結局は卵粥になった


ミネラル米って言う特殊な米を使ってるからたいして塩を入れなくていいし、発汗作用もあるから汗も掻きやすくなって一石二鳥

あと2〜3分もすれば出来上がり、という頃に先ほど別れたはずのペンギンがそろりとやって来た



『どうしたペンギン、粥ならもう少しかかるぞ』

「いや、ちがう」

『じゃあ水か?貯水槽が少し厳しくなってきてるから気をつけてくれよ』

「あー…いや、その…」

『ん?』




何事だ、いつもズバズバ物を言うペンギンにしては歯切れが悪い

気になるがせっつく事はせず粥の様子を見つつ言葉を待つ




「…あ、あのな」




粥が出来上がり火を止めたところで漸くペンギンの口が開かれた



「…船長が」

『あ?』

「うわ言みたいにお前の名前呼んでて、ついさっき目を覚まして、"ジープはどこだ、連れて来い"って…」

『何だそんな事かよ…』



何を言い辛そうにしてるのかと思えばアホらしい

どうせ"連れて来ねぇとバラす"とか言って脅したんだろうな

まったく、風邪ひいた時くらい大人しくしとけってんだ





『了解、丁度粥も出来たし、持って行くついでに構ってやるよ』

「あー…あぁ、うん、頼む」

『………ペンギン、何か隠してるな?』

「や、その…えー、行けばわかる」





何だ、何なんだその返事は





『とりあえず俺の死亡フラグがバリ3ってことは理解した』

「…スマン、正直口にするのも恐ろしい」

『どんだけだ』





嫌な予感しかしねぇ行く気が一気に失せたぜ

かと言って行かなきゃローが暴れる事は請け合い…覚悟決めて行くしかねぇな




『わかった、死なねぇようにはしてみる』




そう言って俺は粥と水、塩分豊富なキュウリの漬物を持って食堂を出る

その後ろでペンギンが"漢だ…"などとよくわからない感動と憧憬の眼差しで俺の背中を見送っている事など知るはずもなくアホ船長の居る医務室へと向かっていった





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ