黒姫

□*第1話*
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───世の中

   自分じゃどーしようもない事が

     あると思っていた

            この日まで───









「だからオレは痴漢なんてしてねぇつったろ!」

「本当にすいません〜〜〜〜!」



今俺の目の前でわちゃわちゃやっているのは俺の幼なじみである桃園 祐喜(16)

ちょっと...いや...かなり厄介な体質を持っているせいでこうして日々なにかとトラブルに高確率で遭遇する

そのおかげで常に祐喜の側にいる俺にも多少の被害は被るわけだけど祐喜ほどじゃないし、離れるとそれも無くなるから然程心配はない

寧ろ祐喜があの体質だから運動神経と反射神経が鍛えられたって言っても過言じゃねぇしな

だからある意味では感謝してる



俺は雑誌を読み飴を舐めながら目の前の光景を見ていたが、ふいに嫌な予感が頭を過る

今までの経験からしてまたなんか起きるんだろうけど...



《ただ今 脱輪事故が発生致しました

         電車は到着できません》



『やっぱりな...』



祐喜曰く俺のこういう時の勘はよくあたるらしい

さて、どうしたものかと思案し始めると同時に仏頂面で祐喜がこちらに向かってくる

そしてドカッと俺が座っている隣に腰を下ろしたが、振り向かなくても負のオーラが漂っているのがわかる(大きな溜め息ついてるし...)



俺はそんな空気を打破すべく1つ小さく息を吐き、祐喜の頭に手を置いて撫でるように動かした

そしたら祐喜ははっとこちらを振り向き瞠目した

俺はあんまり喋るのは得意じゃないから言葉足らずで悪いけど自分の気持ちを正直に伝える



『大丈夫だから、今は焦んな。な?』

「クロ...サンキュー...」



少し落ち着いたのか祐喜はさっきよりか少し安堵したような穏やかな表情で微笑んで頷いてくれた

俺もそれにつられて微笑むと祐喜も笑い返してくれた

こういう時に幸せだなぁ、って思う

こうして祐喜が隣にいてくれて俺を信頼してくれて穏やかな時間を過ごせるっていいよなぁ...と思いながら電車が来るまでの間に暫し祐喜との談笑を楽しむ



その時不意に風に乗って言葉が聞こえた気がした





────忘却の日々 極まれり


  されど我ら 肉の一欠片 血の一滴まで


         汝を忘れる事なき───








ふいっとある建物の方向を見るとその中の1人と一瞬だが目があったような気がした

そして俺が瞬きをした瞬間に同じ場所を見るとその3人の人影はもういなくなった後だった









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