!長編A!
□1話
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―某日 真夜中の港にて―
ザッザッ…
「はぁ…はぁ…っ!!」
「…」
老人が1人、何かに怯えるかのように早足で歩いている。
しかし、その背後に広がるのは漆黒の闇と小さな街灯の光だけ…
――チカッ
街灯の下で何かが光った。
雲の切れ間から差し込む月光に黒い影が浮かび上がる。
―――黒ずくめ。
性別は判らないが、子供のような小さな影。それが突如老人に肉追する。
「や…やめ…」
「…」
街灯が消え、振り上げた刃が月の光を反射する…
ぎゃぁぁぁぁっっ…
街灯が夜道を照らし、波の音だけが響く、静かな港。
――事切れたと思われる老人を見下ろしながら、小さな影は呟く。
「…まだ、足りない」
だが、その呟きもまた波の音にかき消された――。